JR南武線を利用する機会が多い。だいたい、いつも混んでいる。それもそのはずで、武蔵溝ノ口・登戸・稲田堤と、都心方面に向かう私鉄との乗り換え駅がいっぱいあるのだ。その極めつけは、やはりなんと言っても武蔵小杉である。

 東急東横線はもちろんのこと、湘南新宿ラインや横須賀線との乗り換えのターミナル。成田空港に向かう特急「成田エクスプレス」も停まる。東急線が新横浜に乗り入れるようになったから、新幹線を利用するお客も武蔵小杉駅を使うようになった。都会の駅はどこでも人で溢れているが、武蔵小杉はその点においては特筆すべき存在であることは疑う余地がないだろう。

東急“ナゾのタワーマンションの駅”「武蔵小杉」には何がある?

 ただ、武蔵小杉とは?と尋ねたら、乗り換えうんぬんというよりも、タワーマンションの存在を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。東急線に乗って多摩川を渡ってくると、正面には武蔵小杉のタワマンの森が見える。それは圧倒的なまでの存在感だ。

ADVERTISEMENT

今回の路線図。東急線に乗って多摩川を渡ってくると、正面にはタワーマンションの姿が

 実は武蔵小杉がタワマンの森になったのは、せいぜいここ10年くらいの間。だが、たった10年のうちに、武蔵小杉=タワマンというイメージはすっかり膾炙した。あれだけたくさんタワマンがあればそれも当然と言えるかもしれない。しかし、わずか10年である。いったい、これはどういうことなのだろうか。

東急“ナゾのタワーマンションの駅”「武蔵小杉」には何がある?

 そんな疑問を解消するには、武蔵小杉駅を訪れるしかない。武蔵小杉駅は、最初に書いたとおり乗り換えで使う客も多いし、周囲にはタワマンや商業施設、川崎市中原区役所などもあって、地域の人もたくさんいる。乗り換え客と地元の人が輻輳するターミナル、というわけだ。

 で、まずは人混みをかき分けて、武蔵小杉駅の正面に向かう……と、言いたいところだがここで問題がある。いったい、武蔵小杉という駅は、どこが正面なのか。どこが中心なのか。まったく、核が見えない駅なのである。

 これは武蔵小杉に限らず、規模の大きな駅はどこでも似たようなものだ。新宿駅は人によって甲州街道沿いの南口派が居るかと思えば、アルタ前広場の東口派も少なくない。渋谷駅のように地下に上空にと線路が交わる3Dの駅になればなおのこと。ただ、それでも駅の周りを歩き、少し歴史を紐解けばなんとなく見えてくるものだ。

 ところが、武蔵小杉はそれが難しい。