子どもが「ここにもスキマモリがいるんだ!」と…
しかし、いくら効果があって認知度が高まっても、インパクトのあるキャラクターに嫌悪感を抱く人が多ければ問題だ。とうぜん、両社ともにある程度のご意見が寄せられるであろうことは覚悟していたという。しかし……。
「否定的なご意見はほとんどありませんでした。当社では全体で2件だけですね。アプリのプッシュ通知を使ってアンケートも行いましたが、否定的な声はなくて。で、アンケートでは『スキマモリ』を知る前と知った後で、どういう気持ちの変化があったのかを伺いました。
すると、子どもとスキマについて話し合おうと思うと答えて頂いたお客さまが多かった。そして9割以上が継続してやるべきだと言ってくれました」(東急電鉄・目黒さん)
現場からも、肯定的な声が上がってきているという。たとえば、駅でスキマモリのポスターを見ながら親子が会話しているとか、子どもが「ここにもスキマモリがいるんだ!」と話していたとか、そういう声も寄せられる。あべのハルカスでスキマモリのグッズ販売会をしたときも、保護者が知らないスキマモリを、子どもたちは知っている、などということもあったという。
大人の目にはなかなかとまらずにスルーされてしまっても、子どもの目にはちゃんと映る。それが、「スキマモリ」。デザインを手がけた学生たちの思いが、まさに通じたというわけだ。
「大人は子どもにキレイなものばかり見て欲しいと思っているかもしれません。でも…」
「大人は子どもにキレイなものばかり見て欲しいと思っているかもしれません。でも、実際は子どもって妖怪とかそういうものが好きじゃないですか。だから、『スキマモリ』みたいなキャラクターを使うことで、メッセージが伝わるんだと思います」(JR西日本・羽山さん)
いまではJR西日本と東急電鉄が合同でスキマモリのTwitterアカウントを運用。着実にフォロワー数を増やすなど、両社のエリア内外を問わずに盛り上がりを見せつつある。そして、羽山さんと目黒さんは、スキマモリのさらなる展開にも目を向ける。
「鉄道会社はいっぱいあるので、いろんなところが乗っかってきてくれたらいいですよね。すべての鉄道会社と一緒にやりたいくらいです。『スキマモリ』はウチらのものだから、などと隠すつもりはまったくありません。広がれば広がるほど、いい。損することは何もありません。最終的に落ちる子どもがいなくなることが、すべての鉄道会社の願いですから」(JR西日本・羽山さん)
大人になると、ほとんど意識することがなくなってしまうホームと電車のスキマ。その、大人には見えない“スキマ”に、「スキマモリ」は棲む。子どもに直接届け、子どもたちの間で話題になり、スキマのリスクの認知度も上がってゆく。
ハード面での対策が難しいジャンルだからこそ、こうしたちょっと変わった“大人に見えず子どもに見える”アプローチが効果を生むのかもしれない。
写真=鼠入昌史
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