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《トップは死刑判決》手榴弾で“世界のトヨタ”を襲撃、ゼネコン社長を射殺…「最凶の暴力団」工藤会が起こした“凶悪事件”の実態

『暴力団捜査 極秘ファイル 初めて明かされる工藤會捜査の内幕』より #1

2023/07/02

genre : ニュース, 社会

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福岡県暴力団排除条例が施行される

 手榴弾爆発で生じたロート状痕と呼ばれる痕跡だ。前日午前1時55分頃、警備員が地響きのような震動を感じたが、工場を囲むフェンスのセンサーに異常がなかったため、そのままにしていたようだ。鑑識課長として私も現場に向かった。鑑識課員の鑑識活動により、手榴弾のピンを発見した。鑑定の結果、米国製破片型手榴弾と判明した。

 世界のトヨタに対する襲撃事件は、中央経済界にも衝撃を与え、北九州市に進出を計画していた大手企業数社がこの事件により計画を断念したという。

 この事件は現時点、未検挙だが、当時、同工場の建設工事を請け負っていた清水建設に対する嫌がらせだろう。工藤會による犯行以外あり得ない。

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 このトヨタ自動車九州に対する事件を受け、福岡県警はついに捜査第四課を2つに分けて、工藤會取締りを主に行う捜査課を新設することとなった。私はそのプロジェクトチームを担当し、平成21年4月以降、再び工藤會取締りを担当することとなった。

 そして、平成22年4月1日、全国初の総合的暴力団排除条例となった福岡県暴力団排除条例が施行された。

写真はイメージです ©iStock.com

凶暴化する工藤會

 工藤會は事業者への暴力を更にエスカレートさせた。

 平成23年2月、小倉北区の総合病院新築現場事務所で、この工事を受注していた清水建設社員が男から拳銃で撃たれ負傷した。

 度重なる銃撃事件等を受け、清水建設は事務所周辺、更には事務所内に防犯カメラを設置していた。フルフェイスヘルメット、紺色作業服上下の男が現場事務所2階に侵入した。当時、事務所内では男性社員1名が執務中だった。男は社員に向け1発を発砲した。驚いて両手を上げた社員に数メートルの距離に近づくと、社員に狙いを定めて更に1発を発砲した。防犯カメラの映像を見る限り、訓練を積んだ警察官なら外さない距離だった。

 だが、慌ててしまうと訓練を積んだ警察官でも、がく引きとなることが多い。がく引きとは、人差し指で引き金を引く力が入りすぎて、銃口が下がってしまうことだ。