NHKから依頼された「タモリさんの人体模型」
三井 NHKからの依頼で、「タモリさんの人体模型」(2018)を作ったことがあります。体が開いて、中の内臓が見えるという仕様でした。内臓のCADデータをもらって、画像を見ながらすべて手作業で組み立てました。
この番組は、細胞一つ一つがメッセージを発信・会話をしているといったテーマでした。実際の番組では、タモリさんが模型の内臓を外して、その声を聞いてみるといった演出もユニークでしたね。
――自分ではない誰かのアイデアだからこそ、新鮮な視点がありそうです。
三井 そうなんです。仕事でレゴ作品制作をしていると、自分では思いつかないような突拍子もないオファーもあったりするので、趣味でやる世界とはまったく異なる面白さがあります。
――そのほかに記憶に残るものはありますか?
三井 『風神雷神図屏風』(2019)は解像度を意識した、実験的な作品でした。背景となる金屏風部分は、単純に金のタイルを貼っているだけ。その雲のようなモヤッとした部分は一番小さいサイズのレゴを敷き詰めて、解像度の粗いモザイクアートに仕立てています。
真逆に、風神雷神の目や髪はぎゅっと解像度を上げるように心がけました。遠景になればなるほど、解像度をぼやかしていくという試みです。考え方としては、カメラでいうところの「被写界深度」に近い。解像度の異なるものを組み合わせることで、平面でも立体的に見えるように工夫したんです。
――三井さんが、そこまでレゴ作品制作に熱中される理由は何なのでしょう?
三井 あえて2つ挙げるとするなら、まず試行錯誤できるツールとしての魅力が大きいのではないでしょうか。今はなんでも作る前から、ゴールや効率を求めたり、そもそも挑戦しないという選択をとるような時代です。
リスクやコストをコントロールできるかもしれませんが、ただ試行錯誤しないと作れないものもあるわけです。自分もレゴを通じて、たくさん実験してきたからこそ学べたこと、できたことがある。インプットとアウトプットの繰り返しを手軽にできる点で、レゴブロックは最高のツールだと思います。
――2つめは?