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「魚体すべてが金色で神々しいオーラ…」“幸運を呼ぶ”黄金サンマ2匹がさんま水揚げ黄金期ラストに築地に現れた「意味深なワケ」《さかな記者のギョッとした事件簿》

2023/07/01
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黄金の輝き放った後、次第に最悪の不漁へ

 黄金サンマの出現は、震災や原発事故の影響なのか――。その謎を研究機関に尋ねてみると、「メラニン色素を作る能力が先天的に欠けた魚であろう」(水産研究・教育機構)と説明する。実物を分析した結果ではないが「他にも魚体が金色に見えるサンマが獲れたという話は聞いたことがある」(同)という。今後、黄金サンマが出現する可能性はかなり低いそうだが、「地震・原発事故が原因で発生したものではない」というのが研究者の見方だ。

剥製となって今でも鮮魚専門店「魚耕」荻窪本店(東京・杉並区)の売り場に飾られている「黄金サンマ」。築地の入荷時からは色合いが変化し、えらの部分は一部が色落ちしてしまっている(筆者提供)

 突然変異とも見られる黄金サンマ。震災の影響ではどうやらなさそうだが、結果的にその後、サンマは豊漁から不漁へと資源状況が大きく変わってしまったのは事実だ。黄金サンマが築地に登場した翌年の2013年の全国のサンマ漁獲量は、2000年以降、初めて20万トンを割り込み、約15万トンとなり、14年ぶりに10万トン台の漁獲に落ち込んだ。その後も、不漁はますます顕著になって、ここ数年は毎年過去最低の水揚げを更新。昨年22年は、2万トンに満たない約1万8000トンの大不漁で、ほっそりして脂が乗っていないサンマが、1匹数百円でスーパーに並べられるようになっている。

 近年のサンマは、地球温暖化に伴う海水温の上昇や、餌となるプランクトンの不足などにより、資源の減少や小型化などが顕著となっている。サンマが安値でさばかれていた2012年の秋に出現した黄金サンマ。それ以降は徐々に減り続け、今は深刻な不漁で高級魚化している。黄金サンマが何かを告げに、築地へやってきたように思われてならない。

「魚体すべてが金色で神々しいオーラ…」“幸運を呼ぶ”黄金サンマ2匹がさんま水揚げ黄金期ラストに築地に現れた「意味深なワケ」《さかな記者のギョッとした事件簿》

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