日本の秋の風物詩となっているサンマ漁が、間もなく北海道の東沖で始まる。近年、サンマは深刻な不漁で値段が高く、しかも小ぶり。ちょっぴり残念な秋の味覚となっている。かつて豊漁期には、連日、大量のサンマが築地市場(中央区)に運び込まれていたのを懐かしく感じるが、今から11年前の秋、築地に何とも不思議な金色に輝くサンマが2匹お目見えし、1匹1万円の高値が付いた。思い起こすと、このころからサンマは次第に減り続け、不漁時代に突入。「黄金サンマ」が、何かを暗示していたのだろうか――。
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魚体すべてが金色で神々しいオーラ…「幸運か、災害の影響か」と市場関係者
サンマが旬真っ盛りの2012年10月3日の早朝、首都圏の台所である築地市場の水産卸売り場は、一角だけ異様な雰囲気に包まれていた。筆者が築地の卸会社・東都水産の鮮魚卸売り場に向かうと、多くの生サンマが入荷。氷水が入った発泡スチロール箱に20匹以上入った大ぶりなサンマが、同社だけで約4000箱も入荷していた。
築地全体では数万箱に及ぶ大量入荷で、今からは考えられないほどの安値で仲卸やスーパーのバイヤーに引き取られていった。そうしたなか、魚箱に2匹、明らかに他とは違ったサンマが入っていた。そばにいた仲卸など市場関係者は、首をかしげたり、笑みを浮かべたりしていた。
魚箱をのぞくと、細長いサンマのような形をしながらも、「銀ピカ」の魚体とは異なる《金ピカ=黄金サンマ》が、氷水に浮かび上がって見えたのだ。キンメダイのように、真っ赤な魚体に目だけ金色というのとはわけが違う。魚体すべてが金色に輝き、神々しいオーラを放っていた。「幸運を呼ぶ」と、微笑ましい表情を浮かべる人がいた半面、東日本大震災の翌年だっただけに、「地震か原発事故の影響じゃないか」とこぼす人もいた。