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 素顔の彼女はといえば、高校時代は応援団に入り、体育祭直前ともなれば深夜までみんなで練習に励んだというバンカラな一面も持つ。お酒も好きで、飲むと陽気になるタイプであった。酒好きであることはファンのあいだでは早くから知られており、ファンクラブの集いや握手会を開くたび、男性ファンがこぞって一升瓶をプレゼントしてくれたという(『現代』2008年9月号)。

 また、プロレスファンでもあった。本人役で出演した昨年放送のドラマ『拾われた男』(NHK BS・Disney+)でも、ブレイク当時、プロレス好きな“白熱系”である実際の自分と、“癒し系”というパブリックイメージとのあいだで悩むさまを自ら再現している。ちなみに『拾われた男』の原作は、同じ事務所に所属する俳優・松尾諭の自伝的小説である。松尾は駆け出しのころ、ちょうど売れ出した先輩の井川のため運転手を2年ほど務めた。

©文藝春秋

「年齢詐称疑惑」への意外な対処

 ブレイクしたころには、“年齢詐称疑惑”が週刊誌などで取り沙汰されたこともあった。このときの対処にも驚かされたものだ。それというのも、月刊総合誌でインタビューを受けると、年齢を1歳サバを読んでいたことを素直に認めたからだ。

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 井川は短大卒業後、会社勤めを経てモデル事務所に入ったときには21歳になっていた。しかし、モデルのオーディションには応募資格が20歳までというのも結構あり、実際に彼女はそれで落とされたこともあった。それゆえモデルの世界では、オーディションごとに年齢を変えることも珍しくなく、彼女も一旦、公式プロフィールでは実年齢より1歳下にして、時期を見て元に戻していこうと事務所の人と話していたという。しかし、思ったよりも早くブレイクし、いろんなところから取材されるようになり、言い出すタイミングを計りかねているうちに、疑惑が持ち上がってしまった。

『good vibrations―井川遥写真集』(ぶんか社)

 くだんのインタビューで井川は、《嘘が嘘を重ねるというか、便宜上でやったつもりが干支まで変えなくちゃいけなくなって。(中略)自分の気持ちとして後ろめたい、そうじゃないのにという思いが大きくなって、早く自分の実際の年齢に戻したいといつも思っていたんです》と、率直に心情を打ち明けた(『現代』2001年10月号)。

 はっきり認めたのがよかったのだろう、この一件がダメージとなることはなかった。このあと、井川は俳優業へと仕事を広げていく。すでに東洋紡のキャンペーンガールをしていたころから、事務所の勧めにより演技のレッスンを受けていた。