「官邸主導」の罪
さらに福田氏は、小泉純一郎政権から進んだ「官邸主導人事」が官僚の行動を歪めたともいう。
〈内閣人事局ができたことにより、官邸が官僚の人事権を握り、官僚が萎縮して何も言えなくなったとの批判があります。この構想は福田内閣の頃から議論が始まり、私も責任がないとは言えません。ただ、こんなに評判の悪い仕組みができあがるとは、当時は夢にも思っていなかったし、甘く考えていた。そこは忸怩たるものがあります。(中略)
こうなった以上、政治家はもう、権力をフルに使うことは止めなければいけない。権力行使は、正しい政治のために必要最低限度にとどめるべきなのです。かつては役人の交代が早過ぎると思っていたが、せいぜい2年で交代すべき。長く要職に就く者がいると、そこに新しい権力構造ができてしまう。政策自体も歪んでくる。〉
2028年には新しい国立公文書館が完成する予定だ。そこに福田氏はこんな期待を込めている。
〈だからこうした不祥事を機に、国民の間に「もっと記録を重視しよう」という機運が高まれば、政治家が記録を残す動機につながります。公文書改革はまだ完成していない。オン・ザ・ウェイなんです。〉
――福田康夫元首相のほか、初代公文書管理担当大臣の上川陽子氏、公文書に関する政府有識者会議のメンバーを歴任した老川祥一氏、国立公文書館館長の鎌田薫氏、元国立公文書館館長の加藤丈夫氏が参加した「公文書を守れ!」は、7月10日発売の「文藝春秋」8月号に全15ページにわたって掲載されている(「文藝春秋 電子版」では7月9日に公開)。
公文書を守れ!
【文藝春秋 目次】現代の知性24人が選ぶ 代表的日本人100人 藤原正彦、保阪正康、板東眞理子、原田マハほか/SMAPはじまりの日 鈴木おさむ
2023年8月号
2023年7月10日 発売
1500円(税込)