僕の隣には今、坂口智隆が座っている。

 昨年、現役生活に終止符を打ち、今年から古巣オリックス戦の解説デビューを果たした。この日、7月11日のナイターは球団史上最速で観客動員100万人を突破した夜となった。

「よく入ってますよね、今季の京セラは。本当に素晴らしい。宮古島キャンプはお客さんの数を数えたことがあった。たしか……33人。でも新聞には500人と載っていて……え? 違うやん、てなったのが懐かしいですよ笑涙」

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オリックス時代の坂口智隆 ©時事通信社

帰りましょうと言われても、まだ練習をしていた

 僕と同じ兵庫出身。年齢も近く、オリックス時代からいろんな話をしてきた。

 京セラドームの外野の芝は硬く、ワンバウンド目にかなり跳ねる。

 ほっともっとフィールドの風は想像以上に強く、レフト側に風が流れる。

 試合前、バファローズの選手はカレーとうどんをよく食べている。

 神戸に住んでいる時は中嶋さんと近所でよくすれ違った。

 などなど、ゲーム前は現役時代のリアルな経験談を沢山教えてくれる。

 そして、何よりも練習していた。とにかくバットを振っていた。

 糸井嘉男もそうだった。金子千尋もそうだった。当時はメディア取材も少なく、その練習量と練習時間はあまり世間に知れ渡ることはなかった。今振り返ると本当によく練習していた。全体練習が終わっても、部屋には戻らず、コーチやスタッフに帰りましょうと言われても、まだ練習をしていた。取材している僕が先に帰りたくなることもあった。

「糸井さんなんか、練習し過ぎで怪我をするんじゃないかというくらいバットを振っていました。試合が始まる5分前まで打撃練習していて、よしおさん! 行きますよ! 試合ですよ!て何度声を掛けたか。あんな才能ある人が、あんな練習したら……僕らはもっとやるしかないですよね」

 坂口は強くなったオリックスの後輩たちを放送席から眺めながら当時の思い出をよく話してくれる。

「当時一緒にプレーして、まだ現役でやってくれてるのはTと安達と西野、小田、若月、投手なら平野、比嘉、山田ですよね」