戦場でも紛争地帯でも飛んで行き、ミサイルが飛ぶ中で男性スタッフと同じ釜の飯を食べていると、「私はもうボーイズクラブの一員になったんだ」と、得意げな気持ちになって。おじさんと同化したんです。
でも、結局は女性である自分を封印しているわけで、いびつですよね。
親の介護で実感した、「自己責任論」の負の側面
――女を言い訳にせず男並みに働く一方、お母さまの介護では「娘として親の面倒をみなくては」と思われたそうですね。
安藤 大正生まれの母からはさんざん、「親の面倒を子どもが見るのは当たり前」と言われ続けてきていましたから、母をホームに入れる時は大変な葛藤がありました。実際、母から「苦労して育てたのにこんな仕打ちをするのか」と罵倒され、罪悪感のあまり一度は母と同居して私が面倒をみようかと考えたほどです。
――家庭内の問題をすべて「イエ」で抱え込む「日本型福祉社会論」が、安藤家でも展開していたんですね。
安藤 親の世代が刷り込んできた家族の価値観、いわゆる家の中のことは家族ですべて請け負う“自助”の考え方は、「家庭長たる女性が家庭内安全保障をしっかりと行うべき」という、自民党が行ってきた刷り込みと全く同じです。
介護という家の困りごとを家の中で解決できないのは、家庭内安全保障が成り立ってないことであり、要するに、家庭長として役割を果たしていないことになります。日本型福祉社会論が残した最大の負の遺産は、過剰な「自己責任論」でしょう。
――女性たちへの「自分でやらなくちゃ」という刷り込みから、自己責任論へ。
安藤 自民党が刷り込んだもっとも小さな単位は「個人」ではなく「イエ」。だから家の中で解決するのが「自助」で、それができなかったら地域、「共助」で解決しましょうと。で、最後によっこらしょと出てくるのが国という順番です。
でも、この順序が残したのは、肥大化した「家で解決しなくちゃいけない」という自己責任論なんです。ヤングケアラーの問題も、ワンオペのお母さんが助けを求められないのも、全部根っこは同じ。だから、日本型福祉社会というのは罪深いんです。
「お局」「ニュースの女王」…40代になると、悪意ある報道が
――安藤さんも一時期は介護とキャリアを両立しながら40年以上、メディアの第一線で活躍されてきました。“女性キャスター”への扱いはこの間、変化しましたか。
安藤 30代を超えて40代になると、テレビは「ババア引っ込んでろ」の世界ですからね。週刊誌に「お局」とか「ニュースの女王」とか書かれたりしましたが、同年代の男性の同業者がそういったことを書かれるのは見たことがありませんよ。悪意のある見方はずっとつきまといましたし、そういうものを目にする度に傷つきました。