候補者リストに入った人は選挙を一回経験しますから、そうすると少しでも支持母体みたいなものができるわけで、次につながりやすくなります。数合わせでもいいからリストに入ることが重要だし、一足飛びにはいかなくとも、そうやって動かせるところから突き崩していかないと変わらないと思っています。
ただ、現職有利な今の日本で候補者割当制度を行うのは、相当厳しいのが現実です。自民党の大物幹部が本音で語ってくれましたけど、議席をちゃんと守ってきている男性議員に、「女性の新人候補を立てたいのであなたは辞めてください」とは絶対に言えない、と。
だけど、数値目標を各党が設置してやるくらいのことはできるんじゃないかと思っています。
――著書の中では、女性議員を増やす施策の一つとして「選択的夫婦別氏制度」も挙げられていました。
安藤 おっさん化して同化したり、イエに従属させられたりするのではなく、女性「個人」を尊重する社会の認識が必要ですよね。
女性のお医者さんで、医学博士号を取った時の名前が旧姓だったばかりに、結婚後、夫の姓で医学博士と名乗ったら検索に引っかからず、患者から「偽医者」と呼ばれたという話を聞いたことがあります。姓を変えることで個人のキャリアがチャラになるなんて、こんなバカな話はありません。
私は、個人が個人のままで尊重されることの延長線上に選択的夫婦別氏制度があると思っているので、実はこれも女性議員を増やすことにつながるのではないかと思っています。
――安藤さんも選択的夫婦別氏制度が制定されたら、利用しますか。
安藤 もちろんです。正式な書類には今の夫の姓を使っていますけど、もし戻せるものなら「安藤」姓にしたいですね。私が旦那と同じ姓でいる必然性はまったくないですから。
介護、大学院、生放送…なぜ乗り切ることができたのか
――最後に、帯の報道番組のキャスターをしながら介護、大学院での勉強と同時進行ですべてをこなしていた時期もあったそうですが、どうやって両立したのでしょうか。
安藤 仕事中、3分でも隙間を見つけたら論文に目を通していました。授業は全部英語で、膨大な量の英文の論文を読んでディスカッションするんです。どうしてはじめてしまったのかと、後悔したことは数知れません(笑)。
――その原動力は何ですか?
安藤 すごいきれいごとでいいですか? 私、やめない才能があるんです。たしかに、物理的には本当に苦しかったですよ。もうやめてどこかに行っちゃおうかな、という逃亡願望と毎日戦っていました。
そういう時って自己否定しがちなので、半日ジムに行って思いっきりトレーニングしたり、買い物に行ったりして、自分を肯定してあげる。そうやって自分をあやして、ずっとやり続けさせる、そういう才能はあるんです。