後藤 日経は電子版が頑張って有料会員を増やしているので、新聞業界の中では比較的健闘している方だとは言われてるんです。でも、20年後も今のように社会に受け入れられるほどの存在感を保てていられるかというと疑問ですよね。もちろん、私も出身者なので保っていてほしいんですけど、なかなか簡単ではないと思います。
私は今、40歳過ぎですけれど、60歳になったら「定年退職です」と言われて世の中に放り出されます。“人生100年時代”ですから、ひょっとしたらあと40年ぐらい生きるかもしれないと考えると、80歳頃まで自力で働かないといけない。そういう意味で一つの会社に勤め続けて60歳で放り出されて大丈夫かという不安もあります。
高橋 定年後の40年は長いですよね。
後藤 そこで「さよなら」と言われたときに、「後藤さん、こっち来てください」みたいな引き合いがあればいいですけど、20年後はどうなってるか分かりません。そういう意味では外に出ていろいろな経験をしたり、人脈を広げたりとか、早いうちにそういうことをやっておいた方が、人生全体のリスクを軽減できるんじゃないかと思います。
日経に残り続けることのリスク
後藤 つまり、日経を辞めることもリスクがあるんですけど、日経に残り続けることにもいろいろなリスクがあると、ここ数年は思っていました。辞めるべきか、残るべきか、じわじわ思っていた中で、最終的に気持ちが辞める方に傾いたわけです。
高橋 めちゃめちゃ興味深いですね。実はこの企画は、僕自身が会社を辞めるかどうかの参考材料にしたいという私利私欲から端を発してます(笑)。僕も今、辞めたい気持ちもあるし、辞めたくない気持ちもある。別に嫌いな会社じゃないけど、どっちがいいか考える時代になってるなと。10年前はそんなこと思いもしませんでしたけど(※編集部注:2023年2月に高橋弘樹氏はテレビ東京を退職)。
後藤 一緒ですね。僕も5年くらい前は、ほぼ100%定年まで会社にいるだろうと思っていました。そうであれば会社に貢献して、人事評価を求めるわけではありませんけれど、上司に認めてもらうのは大事なことだと考えていました。そういう点で、この5年くらいで価値基準というか、どこに向かってキャリアを追い求めていくのがいいのか考え方が変わってきましたね。高橋さんもそうですか?
高橋 僕も全然変わっちゃいました。僕らは、いわゆる一サラリーマンじゃないですか。サラリーマンだからこそ聞いてみたいのは、価値観が変わったのは時代によるものなのか。時代というのは産業構造も含めた世の中ですね。それとも、自分が40歳になって、この先10年を考えて面白くなさそうだなという年代的なものなのか? それが見定められていないんですけれど……後藤さんはどっちだと思います?