昔は満員電車でも新聞を読んでくれたけど…
後藤 たぶん両方だと思います。自分の中でもはっきり整理できていませんけれど、やっぱり新聞ビジネスの変化が一番大きいのかなとは思っています。今の人って、隙間時間でほとんどスマートフォンを見てるじゃないですか。
かつては中高年の男性だと、朝起きたらNHKを見たり、ソファーに座って新聞を読んだり、電車に乗ってるときも読んだりしてましたよね。でも、今は完全にスマホに取って代わられました。
今思うと、満員電車でも新聞を十数分間読んでくれるって、すごいエンゲージメント(愛着心)だったと思うんです。それがスマホの場合、情報収集だけじゃなくて、Googleカレンダーを見るかもしれないし、LINEをやってるかもしれないし、ウマ娘(スマホゲーム)かもしれない。魅力的なアプリがトップ画面に、たとえば28個くらいあって、そこで秒単位の奪い合いをしてる状況になってますよね。
高橋 通勤電車の中で新聞読んでた時間がスマホに取って代わられて、その中でさらに新聞のライバルは圧倒的に多いわけですよね。
後藤 そこで一つのアプリとして日経新聞が食い込んでいけるのかというと、僕は日経新聞の社員だったし、経済に興味があるから今もスマホのトップ画面に日経電子版のアプリを入れてますが、果たして若い人のスマホの28分の1に入れてもらえるかというと、現実問題としてかなり難しい気はしますよね。
もちろん日経はそういう変化の中でもSNSをやったり、電子版のコンテンツを充実させたりして、どんどん時代に合わせていこうとはしているけども、この先もうまくいくのかどうかは分かりにくいところが正直あります。
これから10年先、20年先、そこの部分に一本足打法で乗り続けるのは、やっぱりリスクがあるんじゃないかと。むしろ分散していろいろなこと、新しいことをやっていきたいという思いがかなりありました。ですから、そういう点では時代の変化というか、報道ビジネスを取り巻く環境の変化というものがすごく大きかったという気はしますね。
高橋 もう一つ気になるのは、結構大事な問題だと思うんですけど、会社を辞めるか辞めないかのときに、すごく居心地が良かったら辞めないと思うんです。居心地が悪いから辞めるってわけでもないですけど、次のチャンスがあるからとか、やりたいことがあるというのもあると思うんですけど、後藤さんの場合どうでしたか?