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「性器が丸見え、恥も外聞も捨てて…」イスラエル人「春画」収集家が驚いた“日本の性愛”《世界一のコレクター》

「性器が丸見え、恥も外聞も捨てて…」イスラエル人「春画」収集家が驚いた“日本の性愛”《世界一のコレクター》

オフェル・シャガンさんインタビュー #1

2023/07/14

genre : ライフ, 社会

note

――貸本屋の活性化などもあって、江戸後期には庶民も安価で手に入れることができたといいますよね。

シャガン 興味深いものをお見せしましょう。これは、妊娠の状況を説明している春画ですが、まるでX-ray(笑)。発想が天才すぎるじゃないですか。春画には、性教育を伝える側面もあったんですね。近代以前に、こうした発想があったことは賞賛すべきことです。

渓斎英泉「枕文庫」1822~1823年(シャガンさん提供)

江戸時代の「オープンな感覚」

――江戸時代は性に奔放だったと伝え聞きますが、シャガンさんの春画コレクションを見ると合点がいきます。

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シャガン 当時の環境も影響しているのでしょう。江戸時代は、庶民の多くが長屋に住んでいました。壁が薄く、隣に住んでいる人の声が聴こえてくる。

 皆さんに、一つ質問があります。英語で“プライバシー”という言葉がありますが、この言葉を日本語で置き換えることはできますか?

――“個人情報”……は違うか。言われてみれば、相当する言葉が見つからない。

シャガン “個人情報”は、相手から見た情報です。これは、英語のプライバシーとは関係ない。プライバシーに相当する、的確な日本語が見当たらないんです。これも大変面白いポイントです。春画を見ると、感情も恥部も“隠していない”。当時の日本人が、とてもオープンだったということが分かる。

渓斎英泉「夢多満佳話」1823年(シャガンさん提供)

来日のきっかけは?

――シャガンさんは、いつから古美術や歴史に興味を抱いたのでしょう?

シャガン 私が生まれたイスラエルという国は遺跡だらけです。歴史が長く、聖書が書かれた国。私が7歳のとき、家族で海に遊びに行ったのですが、そこで小さいけれどとても綺麗な焼き物を見つけました。

 父は、「これは古美術といって、宝物だよ」と教えてくれました。自分が、インディアナ・ジョーンズのように感じました。それ以降、学校をサボっては遺跡に出かけるようになりました。天才は、学校では生まれないからね(笑)。

――なるほど(笑)。なぜ来日し、そして春画を集めようと思ったのか。その点も気になります。