シャガン 来日のきっかけは、エジプトで日本人の女性と知り合ったこと。彼女は芸大の学生で、サムライ、スシ、ゲイシャしか知らない私に、いろいろな日本の文化を教えてくれました。それが大変面白かった。彼女は日本に帰ってしまったけど、私は日本に興味を持ったので、「行ってみたい」という気持ちが強くなったんですね。
それで、1989年に来日しました。当初は2週間の滞在予定のつもりだったのですが、気が付くともう30年以上日本にいることになります。もちろん、定期的にイスラエルに帰っているけどね。
――2週間の予定が30年!?
シャガン 私は日本が気に入ったから、日本でもビジネスがしたいと思い、その間に会社を作りました。日本とイスラエルの懸け橋になるような仕事ですね。それからは、ビジネスビザで日本に滞在するようになったんです。
「頭は使うもの。飾りじゃないよ」
――すごい行動力ですね。さすがイスラエルの方、頭がいいといいますか。
シャガン 頭は使うもの。飾りじゃないよ(笑)。しばらくして、ビジネスも回り出したので、だんだんと余裕ができ始めました。時間とお金を使って、日本の文化をもっと知るために、何か勉強できるものを集めたいと思うようになりました。
最初は、焼き物に関心を覚えました。しかし、焼き物はどこの町で、どのようなスタイルで、何度のかまで作られる……そうした情報こそ知ることができますが、日本の文化を幅広く知ることはできなかった。
いろいろ探して、たどり着いたのが浮世絵でした。「ここには何と書かれているのですか?」「これは何を表しているんですか?」「ここはどういう場所ですか?」、浮世絵は文化や風俗、昔話など日本を知る上で、とても大きな教材だった。
知識というのは、目から入るもの。何かを目にして、それがきれいだったら質問が生まれる。「いつ作られたんですか?」「これは誰が作ったんですか?」。目を通してコミュニケーションが生まれます。
初めて春画を見て、驚いたポイント
――その過程の中で春画と出会った、と?
シャガン ある日、池袋にある知人の古美術を扱うお店へ行くと、ちっちゃい声で、「シャガンさん、春画に興味ありますか?」と聞かれました。私は、それが何なのか分からなかった。そして、後ろの部屋に通され、春画というものを目にして大変びっくりした。 今まで見たことがない世界が描かれていたんです。
――シャガンさんは、初めて春画を目にした際、もっとも驚いた点は何だったのでしょうか?