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春画に描かれる、活発な女性の姿

――一方で、2015年に永青文庫で開催された「春画展」は大盛況でした。

シャガン 徐々に春画が受け入れられてきていると感じています。私のコレクションから約1000点を紹介した『ニッポン春画百科 上下巻』(平凡社)の主な購買層は、ほとんどが女性。その約70%が20代女性でした。この結果は、大変うれしかった。興味を抱いている人が、潜在的にたくさんいることも示された。

 私は来日してから、ずっと不思議に感じていたことがあります。それは、日本の女性は相手への好意や欲望を表に出さず隠しがちで、男性のペースに合わせていることが多いところです。歌川国貞の春画では、女性が男性の帯を引っ張って、リードしているくらいです。男性の困ったような顔が印象的でしょ? 自分の好意や欲望を遠慮せずに行動に移していた女性の姿が見て取れるんです。

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歌川国貞「四季のながめ」1829年(シャガンさん提供)

 女性は控えめの方が良いという風習が強い現在の日本の中にあって、春画に関しては、女性が積極的に興味を示してくれたというのは、うれしいことだったんです。

なぜ男性器が巨大に描かれるのか

――春画を見ると、男性同士、女性同士、果ては神様や妖怪を相手にするものなど、多様な性へのアプローチがある。観ていて飽きません。何より、シンプルに色使いがきれいです。

シャガン 今の日本より、はるかにダイバーシティな世界観。春画は禁制の存在だったので、公には発表できない時代がありました。そのため、絵師たちは、春画の中で自由な表現を追求していた。そうしたアーティストたちのこだわりが、独特の表現や色使いに表れている。ものすごくアートとして個性がある。

 また、ペーパークラフトのように動かすことができる“仕掛け春画”もたくさんあった。アダルトグッズの張型も、象牙で作ったものやクジラの歯を使用したものなどたくさんありました。これらはオーダーメイドで作っていたから、江戸時代の人たちの好奇心に頭が下がります(笑)。北斎は、そうしたアダルトグッズを春画のなかにわざわざ描写しているくらい。

シャガンさんが所有する「仕掛け春画」 ©文藝春秋

――一口に春画といっても、見る、遊ぶなど様々なバリエーションがあるんですね。

シャガン それから火事除けや金運アップのために財布の中に忍ばせるご利益ものとしても扱われていたことを知っていますか? 懐に忍ばせて、ポストカードのように、春画を交換し合うことも珍しくなかったんです。

――春画は、江戸時代のポケモンカードのようなテイストもあったのかもしれない(笑)。一つ気になるのですが、春画の中の男性器は、ことごとく大きく描かれています。どうしてデフォルメしているのでしょう?