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シャガン 男はバカな生き物。リアルな大きさで描いてしまうと、自分のものと比べてしまう。そうすると純粋に画を楽しむことができない。でも、これだけ誇張すれば、誰も自分と比べることはしない。天才的発想だよ(笑)。

シャガンさんの譲れないこだわり

――たしかに! しかし、これだけ膨大な数のコレクションがあるわけですから、シャガンさんのコレクションを見る場があったらいいなと思ってしまうのですが。

シャガン そういった話はたくさんあります。私の故郷・イスラエルにある「ティコティン日本美術館」では過去に2回、私のコレクションを展示する「春画展」を開催しています。実は、先の大英博物館でも、協力してほしいというオファーがありました。しかし、協力する場合は、私は「条件がある」と伝えています。

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 それは、その春画にどのような意味があるのか、メッセージ込みで紹介させてほしいということ。それができないなら、私の返事はNOです。春画が飾られて、その横にアーティストの名前と出版年のみが説明されている展示方法は、私は正しい春画への理解につながらないと思っています。

寺崎広業「出雲のちぎり」1899年(シャガンさん提供)

――なるほど。その方が想像力や知識が深まりそうですね。

シャガン 渓斎英泉の『夢多満佳話』という春画は、性器が勃たないことに対して、「私のことを愛していないの?」と女性が泣いているシーンを描いています。春画には、こうした人間のドラマがあることを知ってほしいんですね。また、手水鉢と柄杓が、それぞれ女性と男性を表すメッセージだったり、雷様は強姦を暗喩しているなど、さまざまなメッセージが隠れている。

 メッセージを説明しないと、ただのポルノだと解釈してしまう方が増えてしまうかもしれない。それは私が望んでいないこと。私が、ポルノグラフィを集めている変な外国人なんだとしたら、私はわざわざ高いお金を出して春画を集めずに、『PLAYBOY』を買っているよ(笑)。

渓斎英泉「夢多満佳話」1823年(シャガンさん提供)

――たしかにそうですね(笑)。将来的にコレクションをどうするつもりなのでしょう?

シャガン 私は博物館を設立したいと思っています。日本人の皆さんに今一度、春画へのプライドを取り戻してもらいたい。そして、来日する外国人へ日本のもう一つの魅力として紹介していきたいです。博物館を実現させるために、区役所の方々や投資家の方々とコラボレーションをしたいと思っています。博物館が完成するまでの間、私のコレクションに興味がある方はウェブサイト(https://shungacollection.com/)で鑑賞することができます。

 そして、私のコレクションの一部を見てもらう機会は、近い将来スクリーンで訪れます。私も協力した『北斎春画』という映画が、7月30日に渋谷・ユーロスペースで上映されるので、ぜひ見てほしいです。

 春画にとても理解のある俳優の寺田農さんと一緒に、私もトークショーに参加予定です。豊穣な感性が、庶民レベルで根付いていること、そして、それが大衆文化=春画という形で表現されていたことは誇りに思ってほしいです。外国人の私が言うのだから、間違いありません(笑)。

INFORMATION

『北斎春画』第1回上映会
7月30日(日)渋谷・ユーロライブ(ユーロスペース内) 10時~上映 入場料 2000円
上映後、トークショーあり。登壇予定者は、寺田農、オフェル・シャガン、春画ール、松村克弥監督