1912年に起きた豪華客船タイタニックの事故は、約1500人の死者を出す惨事となった。それから111年、1隻の潜水艇が5人の乗員・乗客と共に、再び深海へ消えていった。
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設計段階から安全性のチェックを怠ったのが原因か
6月18日、潜水艇「タイタン」は、タイタニック号を見学するため、水深約4000メートルを目指して潜水。しかし約1時間45分後に通信が途絶えた。22日に沿岸警備隊が破片を発見。乗員・乗客5人全員が亡くなったとみられる。
「水圧に耐えられず、爆縮(圧力で押しつぶされること)したのでしょう。原則として、船は設計段階から安全性をチェックしますが、タイタン号は行っていなかったようです。この原則はタイタニック号事故の教訓から確立したものですが、それを見学する潜水艇が、事故を起こしてしまったのは皮肉です」(東海大学海洋学部教授・山田吉彦氏)
ツアーを主催したのは米のオーシャンゲート・エクスペディションズ。同社は2021年7月から、ツアーを始めた。
「潜水艇を操縦していたストックトン・ラッシュ氏(61)は、同社の創業者で、現在はCEO。元々は金融関係の仕事をしていた。スキューバダイビングの趣味が高じて、水中観光のビジネス化を思い付き、09年に同社を立ち上げました」(全国紙記者)
乗船していた英国の資産家は、昨年有人宇宙飛行にも参加
ツアーは8日間の日程で、乗客は「死亡しても(オーシャンゲートは)責任を負わない」という免責書類に署名をしていた。参加費はひとり約3500万円也。
「この種の旅行は、欧米のセレブの間で『エクストリーム・ツーリズム』として流行しています。宇宙旅行や海底の墜落飛行機の見学など、一般人では行けない特別さがウリです」(国際ジャーナリスト・山田敏弘氏)