「どうせ外国人観光客の仕業だ」「トラックドライバーのものかなんて分からないじゃないか」と責任転嫁するケースも……。トラックドライバーたちの社会的地位を下げる「黄金のペットボトル」問題とはいったい?
元トラックドライバーでライターの橋本愛喜さんが解説。新刊『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』より一部を抜粋してお届けする。
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黄金のペットボトル
私は普段、トラックに乗っていた経験と、ドライバーからの悲痛な思いを引っ提げ、国や荷主に「ドライバーの労働環境に対してもっと真剣に動け」とそのお尻を叩いているのだが、毎度こういう活動の大きな妨げになるものがある。
それが「ドライバーによるマナー違反」だ。
なかでも強烈なのが、「黄金のペットボトル」、または「尿ぺ」などと呼ばれている尿入りのペットボトルの存在である。この尿ぺは、現場の労働環境をよくしようと尽力している多くの人たちの努力を一瞬にして吹っ飛ばし、ドライバーの社会的地位を地の底へ突き落とす破壊力を持っている。
トラックドライバーには、クルマを停める場所が全く足りていない。
本来、待機所は「呼ばれるまで待て」と指示する荷主こそが用意すべきであるのだが、設置される気配が一向にないため、近頃、私は民間企業やコンビニ、市区町村などと手を組みながら、トラックドライバーたちが安心して待機できる場所を増やす活動をしている。
が、そこでたびたび聞かれるのが、「トラックの休憩所として提供できる土地はあるが、彼らに貸すと汚されるから」という声。なかでも許せないとして挙げられるのが「尿ぺ」なのだ。
トラックドライバーがペットボトルに用を足す最大の原因は、利用できるトイレが極端に少ないこと。そして、渋滞や事故など、不測の事態が起きた時、近くにトイレがないことにある。
24時間道路上にいる彼ら。緊急措置として、結果的に手元にある空のペットボトルに手が伸びるのは、もはや仕方がない。
ちなみにこの尿ぺが話題になるたびに聞こえてくるのが、「よく入るな」とか「器用だな」とかいう声だ。
悪いが、私は知らん。あいにく経験がない。
が、これまで男性ドライバーへの取材ではこんな答えが返ってきたことがある。