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グミ

 日本では、最近グミ市場の成長が著しい。「果汁グミ」を展開する明治の推計によると、2021年のグミの市場規模は約600億円超。この10年で約2倍に増加し、ガムや清涼菓子を抜いたそうだ。昔からのぶどうやオレンジ味だけでなく、コーラやエナジードリンクやマシュマロ味などこれもグミになるのかというような味も登場し、食感もハード、ぷちっと、もちっと、しゃりもになど多様化。日本はオノマトペが多くて食感を楽しむ民族だと言われるし、これこそ現代の日本みやげとしてふさわしいではないか。受け取った人の驚き顔を想像しながら、矯めつ眇めつして買っていく。

 ところが、そうやって吟味して選んでも、反応はいまいちわからない。開封すらしてもらえないことが多いのだ。嫌なのではない(と信じている)。おそらく原因は、袋の小ささだ。ヨーロッパなどのグミが大袋なのに対して、日本のはとても小さい一人仕様。みやげとして単体で持っていくには少なすぎる。ゆえにチョコ菓子などとセットで持っていくわけだが、小さくて分けづらいからなのか、気分が盛り上がらないからなのか、自分がいる間に食べてもらえることがほとんどない。後で食べてもしかしたら喜んでいるかもしれないけれど、チョコ菓子に比べて食感やら形状やら情報量が多く、やや面倒だ。ちなみに、グミに用いられるゼラチンは豚由来の可能性があるため、イスラム教の国や家庭にははじめからNGだ。

 そんなわけで、絶対盤石と思っていたキットカットへの信頼が揺らいで以来、「どこでも誰にでも喜ばれる万能なお菓子」というのはまだ見つけられていない。ただ、そんな万能選手を見つけることへの関心が薄くなったのも事実で、「すべての外国人が喜んでくれる日本菓子」という万能性よりも「この国の人は何が好きだろうか」と互いの文化の共通性を見つける方がおもしろくなってきたのだ。たとえば、せんべいは欧米ではいまいちだが、インドネシアではウケがいい。食事に添えるクルプックというものに似ているからと聞き、「歌舞伎揚」を持っていったら本当に喜んでくれて、あっという間に一袋が空になった。

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 米食文化であることと、あの甘しょっぱい味がケチャップマニスというインドネシアの国民的調味料に似ていて馴染みがあるのもよかったのかもしれない。

 なかなかクリアできないゲームだけれど、日本の菓子への反応を通して、訪問先の人たちにとっての食べものの見え方や嗜好が一段深く見えてくるのが、おもしろい。おみやげ選びから、旅ははじまっているのだ。