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あんこはトラウマ、グミは開封すらしてもらえない…海外へのおみやげに喜ばれる日本のお菓子の“正解”は?

『世界の食卓から社会が見える』より #2

2023/07/24

genre : ライフ, 社会

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コアラのマーチ

 私自身の子どもの頃のお菓子の思い出といえば、「コアラのマーチ」だ。プリントされた絵柄をなめて消してから食べるというのをおもしろがっていた。見た目が目新しくて会話のきっかけになるし、味は普通のチョコなので受け入れやすい。パッケージの仕掛けや細かいところが日本的で、中のチョコが暑さで溶けても出てこないので問題なし、そして子どもも楽しめる。そういうわけで、子どものいる家庭などにはよく持っていった。

 そこそこ喜ばれていたように思う。ただし近年はアジアの国々の現地スーパーでも同じものが買えるし、よく似たローカル品が出回っていて、目新しさがない。ではヨーロッパではというと、食べ物にも何にでも顔を描くアジア文化をナンセンスだと感じる人もいて、その感覚を知ってからはやや気がひけるようになった。持っていく側の都合としても、六角形のパッケージは長旅の間に荷物の中でつぶれやすく、ひしゃげた箱を渡さなければいけないこともしばしば。だんだん、私の中でコアラのマーチを選ぶ理由が薄くなってきた。

 それでも、やっぱりチョコ菓子は安定だ。日本のチョコはアジアの国々では品質が高いと人気らしいので、「アーモンドチョコレート」「トッポ」「きのこの山とたけのこの里」などをめぐるようになった。

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カントリーマアム

 チョコ菓子の中でも、「カントリーマアム」の地位は絶対だ。日本人が集まる時にお菓子を買うとなったら、まず買い物カゴに入ることは間違いない。熱烈に愛する人たちがいて、きらいという人には会ったことがない。日本らしさは薄いけれど、この柔らかいクッキーというのはどこにでもあるものではないから、まあ目新しさもあるだろう。個包装で大袋入りなので分けられるという利点もあり、よく買っていた。

 ただしここ数年よく言われるようになったのは、「小さっ!」という驚きの言葉。私もそう思う。我らがカントリーマアムは世界標準のクッキーに比べてどんどん小さくなっている。そうすると一度に三つ四つと食べ進め、みるみるうちに袋のゴミの山ができる。途上国では家のまわりや道端に捨てられる。自分の持っていったお菓子で土地を汚すのが心苦しくて、買うのをためらうようになった。

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