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LGBTトイレ訴訟から見る、性自認問題が向かう“困難な問題”

2023/07/14

genre : ニュース, 社会

note

 ちゃんと状況を追いかけていないと状況や文脈を正確に理解することが困難なタイプのジャンルなんですよ。現代社会と性の関係なんて、誰もが関わる重要なことなのに、起きる事件が特殊過ぎて理解しづらいので、みんなの議論になりづらいのもまた、事実です。正直、良く分からんよな。

問題をさらにややこしくしていること

 さらにややこしいのは、先日、LGBTの方々に対する差別を防ぐ目的で理念法という罰則規定などのない新法としてのLGBT法(性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律)が成立しました。推進派も反対派も大騒ぎになったこの法律ですが、国民からの同法への賛否は割と否定的で、そもそも人間の内面、同性愛やトランスジェンダーに関して、国が法律を介してそこまで踏み込むべきなのかってのは良く分からん面があります。

LGBT法 差別解消に「つながらない」49% NHK世論調査 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230711/k10014124331000.html

 海外でも同様に性的マイノリティであるLGBTに対して平等の扱いをする旨の法律がある国はありますが、基本的にこれらはキリスト教圏やイスラム教圏において、宗教的に、同性愛は聖書においては特に指弾されるべき性的逸脱であり、宗教上の罪としてきた社会風土があります。それゆえに、長年にわたり同性愛者の人権は社会問題であり続け、また、キリスト教においては教義を巡って組織内が分裂するほどの激論となり、一方で現代社会においては同性愛者の自殺率の高さはかねて問題視され、懸念が広がっていたのも事実です。

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 ただ、日本においては、海外のように同性愛者がカミングアウトしたり何かの拍子でバレたりしたあとで公然と殴られるとか、殺害されるというような事件は認知されていません。

 性的マイノリティに関しては積極的に権利を主張するというよりは、お互いがお互いの性的指向を尊重して相互に踏み込まない社会にしたほうが、みんな自由でいいんじゃないのとも思います。

 さらには、新たに刑法に「不同意性交罪」なるものが盛り込まれて大変な物議を醸しました。本件も岸田政権下でどういうわけかやる前提でごり押しされて通ってしまった一件です。一般的には同意がない性行為自体が犯罪になり得ることを明確にした改正刑法ですが、「同意しない意思を表すことが難しい状態」にさせた場合は、罪に問われることになるうえ、性行為への同意を判断できるとみなす年齢が現在の「13歳以上」から「16歳以上」に引き上げられて、同年代どうしを除き、16歳未満との性行為は処罰されることになります。