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一人一票の格差問題に関する超重要な問題も

 翻って、日本では戸籍上は男性だが、性同一性障害との診断を受けた人が女性への性別変更を求めた家事審判に関して、性同一性障害特例法の規定にある性別変更には性転換手術を必要とする生殖能力をなくす性別適合手術の必要があるかどうかで、最高裁が19年一度は合憲としたものを差し戻して性転換手術必須は違憲と判断する可能性も出てきました。

 いわば、男性による「性自認は女性」は、手術をしなくても法的正当性はあるとするのかどうかの判断が、おそらく遅くとも年内にも出てくることになります。公共の場所であるトイレや公衆浴場での性自認問題について、大きな影響力を持つ最高裁の結論を正座して待つことになるわけです。最高裁にとっても、大法廷に回付する以上は何らかの打ち出しをするのですが、第20代最高裁判所長官の戸倉三郎さんの花道にあたって、この性同一性障害特例法で違憲判断を出す技をやるのかどうかってのはかなり意見が割れています。

 最高裁判断で性転換手術がなければ戸籍上の性別変更を認めないのは違憲という意見に沿う可能性もありつつ、戸倉さんの長官任期内においては参議院選挙における一人一票の格差問題に関する最高裁判断という超重要な問題もあります。

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https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/733/090733_hanrei.pdf

 そもそも、一人一票の格差の是正は日本国憲法14条における国民平等原則において人口減少に見舞われる地域の議席を減らして都市部を増やす、今回の衆議院10増10減の区割り変更でようやく条件付き合憲となったわけですが、これも選挙区割り(ゲリマンダー)におけるアダムズ式の採用と5年おきの定数・区割り見直しをする前提で、前回は2.08倍で最高裁大法廷裁判官15人中14人の支持で合憲となった経緯があります。

政治の構造そのものを大きく変える大ネタ

 この一票の格差問題は政治の構造そのものを大きく変える大ネタであり、特に、ここで一票の格差の是正を進めると合区が鳥取島根、徳島高知だけでなく東北や南九州などでも発生し、地域代表的な「良識の府」としての参議院の意義問題にも発展していきかねません。一人一票ですべての選挙制度が貫徹されるなら、衆議院も参議院も選出の仕組みが違うだけで二つもある意味ないじゃん。

 国会一票格差問題のほうが長官任期に切る大法廷回付では重視されるのではないかとなると、日本の司法が性自認問題を後回しにする可能性は高くなってきますので、そうであるならば憲法問題として司法判断で「戸籍上は男性だが女性として暮らす人物が公共の女子トイレを使うことの是非」やLGBT法関連で具体的な判断を下すことは当面ないのかもしれません。

 この辺の話は、クレジットカード会社による表現規制や、表に出てこないマイノリティの権利をどう守るのかという論点にどんどん波及していくので、小難しい論点ばかりではありますがご関心のある方は遠慮なく是非掘っていってほしいと願っております。特に、性的マイノリティや少年・少女の性に関する不利益について、法的にどう解釈されていくのかは割とホットな世界であるがゆえに、宗教論争も絡んで世界的な大問題になっているのだ、と考えていただければ、構図も理解しやすいと思いますので。