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LGBTトイレ訴訟から見る、性自認問題が向かう“困難な問題”

2023/07/14

genre : ニュース, 社会

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 いろいろと刑法としてはかなりハードルの低い運用で少年・少女の性被害を減らそうという考えが色濃く出る一方、時間の経過したあとで被害者が乏しい証拠でも割と簡単に被害を訴え出ることができるという点で、冤罪祭りになる虞もある内容で物議を醸しておるわけです。

©AFLO

 特に刑法改正(性犯罪)の法制審議事録などを見ていると、ほかの犯罪に比べて犯罪の立証プロセスが緩すぎてマズいんじゃないかという話が百出しているのが気になります。

 最高裁刑事局第二課長 裁判官・近藤和久さん


「範囲が広範に過ぎるという懸念や、いわゆる司法面接的な措置(虐待被害を受けたと訴える子ども本人より、その虐待の事実について聴き取ること)が明確に定義されていないという懸念など、この部会において、裁判所の委員を含む複数の委員・幹事から繰り返し指摘されてきた問題点が、いまだ払拭されていない」

 

 弁護士・金杉美和さん


「証拠能力の特則の新設については、これまで 多くの具体的な意見を述べさせていただいたつもりです。それらが何一つ反映されず、この 「要綱(骨子)案」が取りまとめられたことには、むなしさを感じざるを得ません」

 先日も、弁護士ドットコムで上記のような記事が発射されましたが、性犯罪対応をしている団体の医師・福井裕輝さんは時効延長されると冤罪が増えてもメリットが大きいからいいじゃないかとかいう発言を掲載しておられます。もちろん、性被害からの回復を担う団体からすれば当事者としてそういう意見があるのは分かりますが、そもそも死刑廃止関連の議論でも「国による処罰・殺人」は事実の認定を最重要視することが前提でもなお冤罪はあり得るという立場であり、裁判における証拠主義も疑わしきは罰せず、冤罪をいかに抑止するかに血道を上げてきた歴史ですから、これはもう法倫理の根幹にかかわる問題だったんじゃないのかなあとすら思います。

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今アメリカ社会で問題になっていること

 一方、アメリカでは各州でついに「反LGBT法」と目される州法が、続々と州議会で可決され、実に75本以上(2023年7月1日現在)も通ってしまっている現状があります。どれもだいたい共和党系の議員からの発案によるものです。

米権利団体が初の非常事態宣言、反LGBTQ州法可決相次ぎ 
https://jp.reuters.com/article/usa-lgbtq-idJPKBN2XT02C 

 例えば、性的マイノリティの皆さんが奇抜なドラァグクイーン(引きずる衣装の意)のファッションをアイコンにデモ活動をすることが多くありますが、テネシー州議会では、公共の場や未成年者がいる場でのアダルト・キャバレーのパフォーマンスを禁止する、罰則付き州法が成立してしまいました。その名も「反ドラァグ法」。いわば、拡大するLGBTの風潮に対するバックラッシュですが、社会的分断に異議の声を上げ、性的マイノリティの権利拡大のために戦ってきたLGBT団体が、結果的に分断の象徴となってしまった事例と言えます。