放送60年を超える『おかあさんといっしょ』(NHK)は、子ども向けテレビ番組の金字塔だ。そのMCを務める《うたのおにいさん&うたのおねえさん》は、日本の親子に最も知られている芸能人と言っていいだろう。現在の《うたのおにいさん》花田ゆういちろう(33)は12代目だが、歴代おにいさんの中でも、独特の存在感を放つのが坂田おさむ(70)だ。

 坂田はバンドマン、フォークシンガーとしてキャリアをスタートし、1985年に同番組の《うたのおにいさん》に。1993年に番組を卒業するが、その後も関連番組に出演するほか、『ありがとうの花』など作詞・作曲者としても子どもと関わり続けている。

 坂田は昨年、古希を迎えたが、今年も『おかあさんといっしょ』コンサートツアーに出演するなど、《うたのおにいさん》の看板を下ろす様子はない。“おにいさん業”への思いを聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

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©榎本麻美/文藝春秋

70歳でも《うたのおにいさん》

──昨年(2022年)12月に古希を迎えたそうですね。「おさむおにいさんが70歳」というのは、視聴者としても驚きがあります。

坂田 そうですね。子どもの頃は、70歳って想像つかないでしょう? だから、60歳くらいの人を見ても、「すごく歳をとってるな」「なんでもわかってるんだろうな」と思ってましたよ。でもね、実際に70歳になってみると、そんなでもないですよ。

──坂田さんは1985年、32歳で『おかあさんといっしょ』の《うたのおにいさん》に就任。40歳で番組卒業後も、一貫して《うたのおにいさん・坂田おさむ》を名乗っています。「おにいさん業」からの引退を考えたことは……?

坂田 ないです。

©榎本麻美/文藝春秋

──即答ですね。

坂田 はい。うん。ないです。そりゃ、加齢はしょうがないよね。70っていったらあなた、やっぱりジジイですもん。

 でも一方で、たとえばミック・ジャガーやポール・マッカートニー、エリック・クラプトンとかね。彼らはみんな80歳前後で、シワも深いでしょ。見た目はどうしても歳をとる。ところがステージに上がると、「俺はすごいだろ」というパフォーマンスを見せつけてくれる。

 だから僕は、それぞれの年齢ごとに出せるパワーがあると思ってるんです。