1ページ目から読む
3/4ページ目

「どの母親も共感する歌」をつくることは可能?

──すごいですか。

坂田 すごい。男性も育児をすることがスタンダードになってきたけど、子どもから見ると、お母さんの存在はお父さんよりまだ全然上。お父さんがかわいそうになっちゃうぐらい。

──お母さんは代えがたいものだ、と。

ADVERTISEMENT

坂田 でもそうなると、お母さんはますますプレッシャーがかかるし、大変でしょう? だから僕は、そうやって頑張ってるお母さんを勇気づけてあげたい。

©榎本麻美/文藝春秋

──「今のお母さんが大変」とは、母親たちの生き方が多様化している、という意味もありますか。

坂田 ええ。僕が番組の《うたのおにいさん》だったのは、昭和から平成にかけて。当時はまだ、専業主婦のお母さんが多かったです。でも今は、一人ひとりの事情が細かく違ってると思う。仕事をするしないだけじゃなくて、結婚や、入籍するしないもそれぞれだものね。

──今の母親の選択肢はとても複雑化しているので、「どの母親も共感する歌」をつくるのは難しそうな気もしますが……。

坂田 難しい。すごく難しいと思う。でも、現実にはお母さんと子供の関係がさまざまだとしても、僕は「愛し合っているお母さんと子ども」という関係を歌いたい。

「私はこの子が好きだ」「お母さんは僕を、私をこんなに好きで、大切にしてくれるんだ」という気持ちは、昔も今も変わらないと思う。その関係を称えるような、お母さんと子どもが原点に返れる歌をつくってみたいな。

「忖度してつくるのはダメだよねえ」

──昨今は男女の役割分担が変わってきたり、「同性婚を認めよう」という声もあり、家族の形が昭和時代とは変化してきました。坂田さんが歌をつくるときに、「今の時代、こんな表現はやめよう」など、意識することはありますか。

坂田 えーとね、特に考えない。……あのね、そうやって考えてつくる歌は、だいたいダサいよ。

「この歌詞は『差別だ』とツッコまれるかも」とか、忖度してつくるのはダメだよねえ。

©榎本麻美/文藝春秋

──『おかあさんといっしょ』は、番組名そのものも、“子育てが女性の役割だという意識を強化しかねない”という声があります。でも坂田さんは、「お母さんはすごい」と思ったら、素直にその言葉を使うと。

坂田 うん。僕は規制をかいくぐろうなどは考えないので。歌をつくるときは、自分の中から素直に出ることばを使います。