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非難に対する尋常ではない「寛容さ」

 結婚して子どもをもうけ、夫、父となったりゅうちぇるの「自分らしさ」への覚悟は、社会がジェンダー問題に本格的に取り組む時流と相まって、多くの賛同者を得た。しかしその一方で「男らしく」「父親らしく」という社会的圧もより一層りゅうちぇるにのしかかる。印象的だったのは、そういった非難に対する尋常ではない「寛容さ」だ。

ryuchell(本人ツイッターより)

「別にいい子にしてるつもりも、いいパパ、いい夫を演じてるつもりも全然ないんですよ。だけどほんっっと番組の打ち上げとかでも決まった話にしかならなくて、『マジでりゅうちぇるは今浮気したら終わりだよ』って(笑)。『なんで浮気する体でしゃべってんだろう』って思いながらも、普通に『ねぇ~』みたいに流してますけど。でもそういう、マイナスに考えちゃう人ってそういうことしか起こらない。

 これは僕の中で大事にしてることでもあるんですけど、『大人になったらね、こういうことがあって大変なんだよ』っていう人は、自分から苦労する道を選んでるかのように苦労してるんですよね。でも、『大人になったらなんでもできるんだよ、いろんなところに行けていろんなものが見られるよ』って言う人はキラキラ生きてる。だから考え方次第だなってすごく思ってて。僕もぺこりんもキラキラした生き方をしたいと思ってるけど、でもそういう考えも否定はしないから流すんです」

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「理解はしなくてもいいんだけど、認めてほしい、『そういうのがあってもいいよね』って。『すべてをわかってあげられなくてもいいけど、でもこういう人も存在はOKだよね』っていう社会になってほしいですよね。だからそれはすごく自分の中でも大切にしてるし、僕でも嫌いな人はいるし、僕でも好きじゃないファッションもある。だけどそれは自分の自由であって、それを僕が否定するのは違うと思う。誰も否定しないということが、余裕のある豊かな毎日を作っていくんじゃないかっていうのは、すごく感じることです」

「例えば批判的なことを言われても『何か言わなきゃいけなかったんだろうな』って、それでその人を嫌いになることもないし、正直そんなに気にならない。一番大事なのはじゃあなんなんだって話じゃないですか。そこの軸がブレなければ、誰に何を言われても、僕は大丈夫」

 新しい父親像、育児スタイルをメディアを通じて発信し続けてきたりゅうちぇるに向けられる風向きが変わったのは、夫妻が離婚を発表した時だったと思う。男性でいること、夫でいることの違和を告白し、離婚理由を「本当の自分と、本当の自分を隠すryuchellとの間に、少しずつ溝ができてしまいました」と述べている。

 それまでのイクメンキャラ、ジェンダーレスキャラに共感していた人たちの中からも「どうして結婚したの?」「ぺこりんがかわいそう」という声が出始めた。もしかしたらりゅうちぇるにとって初めて「自分らしく」の選択が、否定的な受け取られ方をした瞬間だったのかもしれない。