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人間ぺこりんに対するリスペクトと愛情

 実際夫婦がどんな愛情を交換していたのかは、知る由もない。しかしこの時「自分らしく」という言葉と同じくらい「ぺこりんが大好き」「ぺこりんをリスペクトしてる」とりゅうちぇるが繰り返し語っていたのも事実だった。

ryuchellとpeco(pecoインスタグラムより)

「とにかく僕じゃなくてぺこりんなんですよ。ぺこりんがいてくれるおかげで、それぞれの悩みとかイライラ、不満を、外じゃなくて家の中で解決できるんです。ぺこりんがいるから。やっぱりぺこりんの存在が大きい。ぺこりんも僕も、自分のイライラやストレスは人様の前で出すもんじゃないって思ってる。みんなにキラキラを与えたい、ハッピーを届けたい、こういう考え方もあるんだよって知ってほしいっていうのがテーマにあるので。でもたまにTwitterに『あ、疲れてるね』ってコメントが来て、『バレちゃった』とか思うんですけど(笑)。でもほとんどのイライラはぺこりんが解決してくれる。泣くぐらい話し合って、とっても傷付いたときは「もうやだー!」って愚痴も聞いてもらって。そういう発散を家族の中で出来てるから、みんなに僕がハッピーな姿を見せられるわけで、それは本当にぺこりんのおかげなのです」

「ぺこりんは本当に優しいの。子供が生まれたら愛情がバーッてそっちに行っちゃって、パパはほったらかしにされちゃうとかよくあるって聞くじゃないですか。でもぺこりんは『リンクと出会わせてくれて本当にありがとう』って言ってくれるんですよ。それって実はママの口からパパになかなか言えないと思うのに、そういう自分の思ったことを素直に、感謝も素直に伝えてくれる子なので」

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「おっぱいをあげること以外は僕でも全然できる」と、ぺこりんが苦手な、出産にまつわる煩雑な手続きなどはりゅうちぇるが担当し、「まずぺこりん優先」と妻にかかるストレスをなんとか軽減しようとしてきたと話していたりゅうちぇる。女性としてというよりは、ぺこりんという人間そのものを尊重しているように感じた。

「僕、そもそも女だから男だからっていう考えをしないんですね。女子だから家庭科得意、男子だから体育が得意って考え方が大嫌い。その人の個性その人の性格その人の向き不向きがあると思うし、だからこそ夫婦になってもママとパパになっても、僕とぺこりんっていう個性を大事にしようと思いました」

「男女とかじゃなくて人と人だし、そういう気持ちが根底にあるから、誰がやるべきとか分担するとかではなく、今出来る人がやろうみたいな感じになってるんですよね」

ryuchell ©時事通信社

インタビューの最後に語った「僕ね、夢があるんです。」

 たった一回きりのインタビューでは何もわからないかもしれない。でも一回きりのインタビューでしかわからないこともあると思う。私がこの時に感じたのは、「自分らしく生きる」ということへのりゅうちぇるの真摯すぎる問いと、全ての人が自分らしくあるべきだからこそ、自分に向けられた非難さえもその人自身の個性と考えて許容する、少し行き過ぎとも思えた寛容さ、そして人間ぺこりんに対する尊敬の念にも似た愛情だった。

 インタビューの最後に笑顔で話していた「僕ね、夢があるんです。リンクが小学生になったら、PTAの会長になりたいの!」が果たされなかったことが、私はとても残念でならない。