そば切りの世界では、多くのそば打ち職人が旨い十割(とわり)そばを打つことに腐心してきた。つなぎ(小麦粉)を使わないため、熱湯をふりかけ核にするようにして水回しをする方法や、つながりやすい厳選したそば粉を吟味するなど、試行錯誤を繰り返しても、十割そばを打てる名人になるのは至難の業と言われている。
2018年1月オープン こねたて十割そばを立ち食いできる店
ところで、立ち食いそばの世界では「押し出し式」製麺機を使った十割そばを提供する店が増加中だ。新宿御苑前駅からすぐの所にある「新宿十割蕎麦」もその一つだ。今年の1月の開業というできたての店である。
「新宿十割蕎麦」は6人も入ればいっぱいになるカウンターだけの店である。入店すると、押し出し式製麺機がまず鎮座し、職人さんが黙々と手ごねの仕込みなどを行っているところだった。
メニューは潔く、「藪十割ざるそば」、「更科十割ざるそば」各500円、「豚肉十割つけそば」、「鶏肉十割つけそば」各700円の4つのみである。それに「ちくわ天」100円、「鶏天もり」、「えび天もり」、「いか天もり」各200円などをチョイスできる。
武蔵小山の人気パスタ店「とすかーな」も押し出し式製麺
若い紳士の先客2名は生ビールを1杯、2杯と飲みながら、旨そうにざるそばを食べていた。
「押し出し式」というのは、冷麺を作る機械を想像していただければわかると思う。丸くこねたそばをシャワーの先みたいな押し出し口から加圧して麺として押し出し、出たところを「シャーッ!」と包丁で切って、熱湯に落として茹でていく。
すでに60年以上前からそば用の押し出し式製麺機はあったそうだ。麺の違いこそあれ、武蔵小山の人気パスタ店「とすかーな」もパスタ用に使用している。立ち食いそば屋では、2000年頃、東銀座にあった人気店「十割そば郷(さと)」が使用し人気を博した。現在では、新川1丁目の「がんぎ」もへぎそば用に押し出し機を使用しているし、新橋の「さだはる」やチェーン店として人気の「嵯峨谷」や一部の「富士そば」も活用中である。