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粉の状態によって5秒位幅を持たす茹で時間

 そして、「新宿十割蕎麦」の麺は押し出し式の技術を知り尽くした男たちの力作といってもよいだろう。

手ごねした「そば玉」を機械に入れる。押し出された麺を職人さんが「シャーッ!」と包丁で切り落とす。下はそのまま茹で釜

 岩手の名店でそば打ちの技術を習得した店長の森さんに聞くと「新宿十割蕎麦」のそばには一貫性があるという。使用する押し出し式製麺機に合う粒子の秋田産のそば粉を使う。そして、提供するぎりぎりのところで小ロットで手ごねで打ち、時間をおかないで製麺する。そうしないと、ハリのある十割そばができないという。麺は試行錯誤の結果、細く不ぞろいにすることにこだわった。茹で時間はわずか20秒程度で、その時の粉の状態によって5秒位幅を持たすという。

「そばがうまくできたかは、水でさらした時の手の感触でわかる」そうだ。

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甘みのあるつけ汁、みずみずしい麺

 さて、「新宿十割蕎麦」の麺はどんな麺だろうか。さっそく、「藪十割ざるそば」を注文してみた。職人さんが手ごねで作った丸いそば玉を押し出し機に入れ、機械を作動する。すると押し出し口から麺が勢いよく出て来て、それをシャーッ! と適当な長さに3回ほど切って、麺を下の熱湯に落としていく。ゆで時間は本当にわずか20秒程だった。あっという間に麺あげして水にさらし、ざるに盛られて登場した。

ラジオは81.3 J-WAVEが店内に流れていた

「藪十割ざるそば」はやや濃い色合いで、麺線は細くみずみずしく輝いている。つけ汁は老舗の辛いものではなく、やや甘味を感じる若者向けのタイプとでもいえばいいのだろう。量も300グラムはあるだろうか、十分である。麺のコシはよく、口当たりはツルツルの食感だ。

「藪十割ざるそば」

 以前別の店で食べた十割そばはもう少し太目の平打ちで、やや重いざらっとした麺だったが、「新宿十割蕎麦」の麺は軽いしなやかな麺である。これが十割そばなのかと驚いてしまう。

つけ麺のほうは、カレー粉とラー油が味変の決め手

 一緒に行った友人は、「豚肉十割つけそば」を更科(吟醸粉)で注文した。更科はいわゆる一番粉を使ったもので、甘皮などを含む全粒粉で打った藪よりも麺はやや白く同じようにしなやかである。つけ汁は豚バラ肉をつゆで煮てごま油を落として提供される。調味料として付いてくるカレー粉とラー油が味変の決め手だそうだ。カレー粉は肉やごま油だけでなくそばとも相性がよい。これはさすがなアイデアである。

「豚肉十割つけそば」を更科(吟醸粉)で

 手打ちや老舗の十割そばも敬意を払うべき伝統ある旨いそばだが、手頃な値段で、量もたくさん、しかもしなやかな麺が食べられる「新宿十割蕎麦」の十割そばも、これからの一つの提案として成立しているとつくづく思う。立ち食いの十割そばの世界は進化している。今後も熱く広がって行くのだろう。

INFORMATION

新宿十割蕎麦

新宿区新宿1-9-8 真木ビル 1F

営業時間 11:00~22:00(16:00~17:00休憩時間)

定休日 日