ところが、ここに落とし穴があります。川は岸から急に深くなっていることがしばしば。深さを確認せずに飛込むと、とたんに溺れてしまうことがあります。そしてこれは大人の話ばかりではありません。家族連れでバーベキューをしに清流を訪れたとします。大人はバーベキューの準備をするためにクルマからセットを下ろしたりしています。そこで子どもが「先に川にいっていい?」と聞いてきて、思わず「いいよ」と答えてしまう時があるかと。もし、そのまま子どもが川に突進して飛び込んだらどうなるでしょうか?
この落とし穴は怖くて、川ばかりでなく、海でも、プールでも同じような事故が発生しています。水辺に着いたとたんに水難事故が発生。これが実際の水難事故の傾向なのです。水辺についてから数分後という時間軸で重大事故が発生していますし、ほとんどの重大事故はその日の初めての入水で起こります。
砂の河原は水難事故多発地帯
砂の河原や砂の川底の続く川は危険度・最高です。一見すると海の砂浜海岸のように見えてとても穏やかです。砂のたまる川岸では目の前の川の流れがゆったりとしていて、危険性を感じません。こういう岸は、上流に砂防ダムがあるような上流域や河口近くに多く見られます。あまりにも安全そうに見えるのでやはり川が「おいで、おいで」と誘っています。しかし、砂の河原は水難事故多発地帯です。もし、砂の河原が続く川で過去に何人もの人が命を失っていたら、それは砂の川底にやられてしまったかもしれません。
こういった砂の多い川には、図1に示すように砂嘴という構造がだいたい見られます。砂嘴とは岸から川の中に続く砂の浅瀬です。砂嘴は川の中央に向かって伸びているので周囲より浅いところが川の真ん中に向かって続いているように錯覚します。だからこそ、この砂嘴が入水ポイントに選ばれます。誰でも自然に足を踏み入れます。
ところがこの砂嘴、途中で急に深くなります。そして砂嘴に沿って岸から川の本流に向かって流れができています。これはまるで海の「離岸流」です。だから砂嘴を伝って川の中で急に深くなって、Uターンして戻ろうと思っても足元の砂が崩れて戻れず、しかも真正面から「離岸流」を受けるのでますます戻れません。ましてや、さらに深い所に流れで押し流されるので、結局呼吸ができずに溺れてしまいます。
お子さんが浮き輪や救命胴衣(ライフジャケット)を着用しているからと、安心ではありません。こういった砂嘴からお子さんが流されると、親はとっさに追いかけます。そして親がすぐに深みにはまりお子さんの目の前で溺れることになりかねません。