戦争の終わり方は「2つ」ある
――6月23日に起きたプリゴジンによるワグネルの反乱で、一瞬、ロシアの内戦の可能性もあるのではとSNSを中心に憶測が飛び交い、ウクライナ戦争の終結への道筋の可能性も見えたかに思われました。
しかし、それも失敗に終わり、結局のところ戦争の長期化には変化がなさそうに見えます。本書でも語られていますが、改めて、戦争終結への道筋についてお話しいただけないでしょうか。
高橋 本書では戦争終結のシナリオの一つ、「ワイルドカードイベントの発生」としてロシア国内での政変にも触れましたが、結局のところ、ワグネルの反乱については、プリゴジン自身が主戦論者ということもあり、ロシア内政変につながる「ワイルドカードイベント」にはならなかったということです。
ここしばらくのウクライナの反転攻勢を見ても、大規模な局面の展開には至っていない。どこかでロシアが大きなミスをすればウクライナに突破されることもあるでしょうし、逆にウクライナが大きなミスをすればウクライナが危うくなることもあるでしょう。ただ、プリゴジンの乱を経ても、依然としてこの戦争が長期化するということは間違いなさそうです。
ざっくり言うと、この戦争の終わり方としては2つのパターンが考えられます。つまり、ウクライナがロシアに占領された土地を諦めてロシアに譲り渡すか。あるいは、ロシアがウクライナを占領するのを諦めてウクライナから引き上げるかです。
そのどちらかをプーチンとゼレンスキーの両者に受け入れさせることができる国があれば停戦の仲介が可能になるわけですが、実際にはトルコにせよ中国にせよ、そんな力はありません。
これはみなさん実感されていると思いますが、これまでのイラク戦争や湾岸戦争の時とは違って、今回の戦争では、ありとあらゆる情報が流れてきます。一部には故意に流されている偽の映像や情報もありますが、とにかくその質と量においてまったく違うんですよね。
この間、報道を通じて、戦争研究所などが随時更新しているロシアによる支配地域を示した地図など触れる人も増えたと思いますが、赤で塗られたロシアによる占領地にはウクライナの人たちがこれまで住んでいて、しかし、その人たちの生活が奪われた土地なわけです。その当たり前の事実を忘れてはいけません。