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新しい総力戦の時代が始まった
――本書のサブタイトルである「デジタル時代の総力戦」という言葉は、本書の執筆過程で加わった言葉です。過去の大戦と、今回の戦争の違いはどこにあるのでしょうか?
高橋 第2次世界大戦は、外交も経済も情報も何もかもすべてを軍事につぎ込むという意味での国を挙げての総力戦だと位置づけられます。ところが、今回の戦争は始まって以降もロシアもウクライナも外交を続けているし、経済制裁を巡る米欧とロシアのせめぎ合いも続いている。
そして何より、この戦争ではSNSを通じた情報発信力の重要性が顕著ですよね。ゼレンスキーがTwitterやテレグラムで、そのままテレビで使えるような形で情報を発信し、それを世界中のテレビ局などが拡散していく。それは役人やスポークマンが一日数回の記者会見をやってもかなわないような情報量と伝播力です。
ゼレンスキーは今回、世界を舞台に、有事に求められる新しいリーダー像を打ち出し、そのキャラを演じ続けていますよね。今後、そうした力は有事のリーダーにはますます求められる条件になったことでしょう。この情報力や発信力というものも込みで、軍事だけでなく、外交や経済や情報といった手段を死力を尽くして使っていく、新しい総力戦の時代が始まったと私は捉えています。(#2に続く)