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出演者、スタッフが連続告白!『らんまん』を新発見する

18週以降は「覚悟を持って描いた」奥深いのに、わかりやすい…朝ドラ『らんまん』はいかにして生まれたか《制作統括が語る》

18週以降は「覚悟を持って描いた」奥深いのに、わかりやすい…朝ドラ『らんまん』はいかにして生まれたか《制作統括が語る》

制作統括・松川博敬氏が“理想”とする「2つのドラマ」とは

2023/07/22
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「おかげ様で、予想の100%を超える反響と、高い評価をいただいていて、本当に幸せです」

 と語る松川氏。決して「話題やヒットを狙って」とか「気をてらって」といった構えでこの朝ドラを作ったわけではなさそうだ。それは、ドラマ本編の質実剛健さからも存分に伝わってくる。企画の立ち上げの段階では、どんな思いがあったのだろうか。

朝が待ち遠しくなるドラマを作りたい

「朝ドラは毎朝観るものですから、みなさんの生活の中でとても大事なものだと思うんです。だから、とにかく毎日『朝が来るのが楽しみだな』と思えるような朝ドラを作りたい、私自身がワクワクしながら観られるドラマを作りたい、という気持ちが強くありました。そこはもう、真剣にやろうという思いでしたね」

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 いたって真摯、そして実直な「朝ドラ愛」がまず土台にあったのだという。さらに、こう続ける。

©NHK

「もちろんこれは、私ひとりの力ではありません。ドラマはスタッフワークですから。いちばん初めの、企画のコアな部分を作っていく段階では、かなり念入りに揉んだと思います。スタッフも慎重に固めていきました。企画自体への『これなら勝負できる』という手応えは大きかったです。企画に呼ばれるように、徐々に『納得のいくメンバー』が集まっていきました。

 キャストに関してはやはり、私たちが切望した神木隆之介さんに主演を受けていただけたことが、大変ありがたかったです。主演が神木さんに決まったことで、スタッフも、それから共演者のみなさんも『これは心強いな』と思ったんじゃないでしょうか」

根拠地となっている「伝説の朝ドラ」

 そんな、チームワークを重んじる松川氏。ドラマ制作に対する思いと姿勢には、“根拠地”となっている作品があるという。

「私個人の思いで言うと、まだ若手の頃『カーネーション』(2011年後期)に演出として参加したことが、多分に影響しているかもしれません。自分が朝ドラをやるからには、『カーネーション』に恥じないものを作らなきゃ、と思っていました。

 これは決して、『超える』とか『超えない』とか、目標とかではなくて。全く別のドラマなので、比較するつもりはないんですけれど、『カーネーションのときに苦労してやったことに恥じない作品にしなくては』という思いが、常に私の中にはあります」

『カーネーション』をこよなく愛し、関連書籍にも何冊か携わっている筆者は、この言葉を聞いて膝を打った。同作は、「朝ドラを文芸作品の域にまで押し上げた」と言われる伝説のドラマである。