連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)が好評だが、現行の朝ドラ最新作に負けず劣らず、NHK BSプレミアムで7時15分から再放送中の『あまちゃん』への視聴熱が目覚ましい。

 2013年の本放送から10年。BSプレミアムでは2度目の再放送、CSの再放送も合わせると、今回で5回目の放送となるのにもかかわらず、連日Twitterのトレンドに『あまちゃん』関連のキーワードが上がっている。

 Twitterの感想を見ていると、今回が初見だという視聴者も多い。本放送で見ていた人は「あれから色々(本当に色々)あった10年」に想いを馳せながらしみじみ、初めて見る人にとっては「“レジェンド朝ドラ”と言われるだけあって、やっぱり面白い」といったところだろうか。

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能年玲奈(現・のん) ©文藝春秋

「朝ドラ3大ビッグバン」の大トリ

 シリーズ開始から62年、通算108作。「国民的番組」と呼ばれる朝ドラも、今日までにさまざまな変遷を経てきた。特に、00年代終盤に最低視聴率まで落ち込んでしまった後の、作り手たちの力戦奮闘は想像に難くない。

 筆者は常々、『ゲゲゲの女房』(10年)、『カーネーション』(11年)、『あまちゃん』(13年)が、21世紀の「朝ドラ3大ビッグバン」説を唱えている。

『ゲゲゲの女房』は、50年近く続いた8時15分からという放送時間を15分繰り上げ、8時からの放送に変わった1作目。

『〜の女房』と題しながらも、描いていたのは「夫婦二人三脚で歩んだ『漫画家・水木しげるの人生』」であり、重厚な人間ドラマ。それまで朝ドラを見ていなかった、年齢性別にかかわらず通勤前の社会人や、通学前の若年層の視聴者を取り込むことに成功した。

 旧来の「朝ドラは主婦が家事の片手間に見るもの」という価値観を、放送時間と内容の両面から変えたのだ。

『ゲゲゲの女房』でヒロインを演じた松下奈緒 ©文藝春秋

 また、翌年後期の『カーネーション』は、『ゲゲゲの女房』で広がった視聴者層をさらに拡張させ、普段、朝ドラはおろか、テレビドラマをあまり見ない層までをも引き入れた。

 “流し見”を許さない高度な映像表現は文芸作品の域に達しており、「人は死んで終わりではなく、生ける者と“共存”してゆける」とのメッセージが、2011年という年に朝ドラから放たれたことの意味は絶大だった。

「朝ドラがここまでやれるんだ!」という、ある種の到達点を見せた作品である。