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 人情物語と笑いを基調とした『あまちゃん』は、とにかく明るい。面白おかしくて楽しい。しかしその「明るさ」の奥底には、登場人物たちの人知れぬ悲しみや葛藤が見える。一人息子を海で亡くしたかつ枝の「みんないろいろあんのよ。いろいろあって今日があんのよ」という台詞が象徴的だった。

 その「葛藤」を下地にした「明るさ」があるからこそ、登場人物たちの、ひいては東北の人たちの「魂」が、見る者の胸に迫ってくる。ユーモアとペーソスは表裏一体。そしてそれは、人生そのものである。

「エンタメとは何か」を自問した作品

 震災から3年後、『あまちゃん』放送から1年後の14年、筆者が企画・編集で携わったとある『あまちゃん』の特集記事で、今も4期目にして現役の岩手県知事・達増拓也氏に寄稿を依頼したことがある。その中の一文が胸を打った。

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(『あまちゃん』を見て)笑いながら、朗らかに復興に取り組んでいいんだな、という実感を得て、大いに救われたところもあります。

 アキが目指す「観光海女」や「アイドル」という仕事を通じて、このドラマは「エンターテインメントに何ができるのか」と自問していたように感じる。その答えが、達増知事の言葉に集約されているのではないだろうか。

 エンターテインメントは、人の心をほぐすことができる。そして、力を与えることができる。このドラマは物理と心、両方からの復興を後押ししたのだ。

 今回の再放送とタイミングを同じくして、今年4月15日から「三陸元気!GoGo号」と名づけられた、三陸鉄道の「『あまちゃん』放送開始10年記念ラッピング列車」の運行が始まった。その資金は『あまちゃん』を愛する有志により、クラウドファンディングで集められたという。「『あまちゃん』現象」は、まだまだ現在進行形なのだ。

参考・引用元:『連続テレビ小説読本』(洋泉社)