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出演者、スタッフが連続告白!『らんまん』を新発見する

18週以降は「覚悟を持って描いた」奥深いのに、わかりやすい…朝ドラ『らんまん』はいかにして生まれたか《制作統括が語る》

18週以降は「覚悟を持って描いた」奥深いのに、わかりやすい…朝ドラ『らんまん』はいかにして生まれたか《制作統括が語る》

制作統括・松川博敬氏が“理想”とする「2つのドラマ」とは

2023/07/22
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 ちなみに松川氏が演出を手がけたのは、糸子(尾野真千子)と三姉妹の世代交代のはじまりを描き、安田美沙子演じる聡子による「さみしい、もうさみしいさかい」という珠玉の台詞が登場する第20週「あなたを守りたい」と、老年期の糸子(夏木マリ)が病院でのファッションショーをプロデュースする第25週「奇跡」。

 どちらも作品にとって重要なシークエンスである。続けて松川氏はこう明かす。

松川氏が胸に刻む「2つの代表作」

「私が胸に刻んでいる『代表作』が2つあって、朝ドラでは『カーネーション』。これは作品性の高さにおいて『理想』といえるドラマでした。それから、大河ドラマでは『篤姫』(2008年)。こちらも演出として携わったのですが、何より現場の盛り上がりというか、雰囲気が良くて。

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 自分が統括でドラマを作るなら、あのときと同じような現場を作りたいと思っていました。『らんまん』のチーフ演出をつとめる渡邊良雄は、『篤姫』の演出チームにもいたので、あの現場で感じた思いを共有して、今に引き継いでいるところがあります」

 松川氏の指針となる『カーネーション』と『篤姫』が、『らんまん』に大きく影響していることは間違いないようだ。『らんまん』でナレーションをつとめる宮﨑あおい、万太郎の祖母・タキを演じる松坂慶子、そして他にも多くのスタッフが『篤姫』からの縁で起用された。

©NHK

 そのチームワークの盤石さは、ドラマを見ていてもよく伝わる。カメラ・照明・大道具・小道具・衣装・「消え物」と呼ばれる料理や菓子に至るまでの、きめ細やかな目配り。これらもやはり、現場の「士気の高まり」から自然と生まれるものなのだろうか。松川氏は語った。

「スタッフひとりひとりが各分野の職人であり、プロフェッショナルであることは大前提なのですが、やっぱりスタッフのやる気や熱量っていうのは結局、脚本にかかっていると思うんです。脚本家の長田育恵さんが、それだけのものを書き上げてくださった。

 1~3週ぐらいまでの台本を初めて読んだスタッフ全員が、『これは絶対に面白い作品になる』と口を揃えて言ってくれましたし、出来上がった完パケ映像を見てさらに、手応えとやりがいを感じてくれているのがわかりました。脚本と、それを形にしてくださるキャストのみなさんの演技が、スタッフの熱量が高まっていく原点だと思います」