昨年、俳優の水川あさみが同じく俳優の夫・窪田正孝を主演に据え、初の監督作品となる短編映画『おとこのことを』(オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season4』の一作)を手がけた。

 発端は、水川が友人の俳優・山田孝之から、彼がプロデュースに携わっていた『MIRRORLIAR FILMS』で監督をやらないかと唐突に連絡を受けたことだった。話を聞けば、年齢や性別、職業などさまざまな垣根を越えて新しい映画製作の実現を目指すという趣旨の企画と知り、共感を覚えて参加を決めたという(『キネマ旬報』2022年9月上旬号)。

水川あさみ ©AFLO

夫を主演に選んだわけ

 ちょうど親友の桃井麻矢が脚本を勉強していたので、彼女と組むことにした。ここから生まれたのが、部屋に一人引きこもっていた若い男性が、あることをきっかけに変化の兆しを見せるというストーリーであった。その役に窪田を選んだのは、《初めての演出に不安もあったので、日々一緒に過ごしている彼なら、私のやりたいことを汲み取ってくれるんじゃないかなと思ったこと》も理由の一つにあるという(「FIGARO.jp」2022年9月20日配信)。

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 他方で、海外ではプライベートでのパートナーが一緒に面白い作品をつくっている例はたくさんあるのに、日本ではなかなか難しいのかな、という話をちょうどしていた時期でもあったらしい。

水川あさみの初監督作『おとこのことを』(2022年)

 映画の公開時、夫婦そろって応じたインタビューでは、窪田が《今回、夫婦の共作に対するネガティブな概念みたいなものは壊すことができたので、さらに枠を広げていきたいという気持ちはあります》と語ったのを受け、水川は《宮沢りえさんと森田剛さんのご夫婦も、一緒にいいものを作りたいという情熱にあふれている、エネルギッシュでとても素敵なカップル。道標となるような先輩がいてくださるのは刺激を受けますし、心強いですね》と語っている(「FIGARO.jp」前掲)。

 宮沢りえは、水川が若い頃から憧れてきた俳優である。二人は2011年にNHKの大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』で共演、戦国武将の浅井長政とその妻・市のあいだに生まれた三姉妹のうち、長女の茶々(淀殿)を宮沢、次女の初(常高院)を水川が演じた。このとき、宮沢からむき出しの“本気”をひしひしと感じ、彼女が一言セリフを言うだけで水川は自然に涙があふれたという。

超人気ドラマの劇場版で俳優デビュー

 以来、ちょうど10歳上の宮沢を目標としてきた。2013年、30歳になった直後のインタビューでも《10年後には、りえさんのような素敵な女性、そして女優に近づけるといいですね》と語っていた(『週刊現代』2013年8月31日号)。それから10年が経ち、きょう7月24日、水川は40歳の誕生日を迎えた。