個人情報の扱いというのは、もっと厳重な管理のもとで行う大変な仕事だと思っていたので、「簡単」を連発されても、背筋が寒くなるだけです。
2022年6月、兵庫県尼崎市の約46万人ぶんの個人情報が入ったUSBメモリーを委託業者が無断で持ち出して紛失したという事件があり、大騒ぎになりました。紛失したのは、再々委託先の社員で、多重下請け構造が問題になったばかりです。
当の自治体が知らなかった「総点検の前倒し」
政府が指示した「総点検」については、まだ準備さえできていないという自治体が多いのですが、なんと、8月末としていた中間報告が、8月上旬に前倒しになりました。しかも、前倒しが指示された6月30日に、前述の世田谷区長はまだ何の指示も受けておらず、テレビで知ったとのことでした。
マイナンバーカードでは、コンビニ証明書交付サービスで、別人の住民票の写しが交付されるといったトラブルが続出しました。
これに対して、河野大臣は5月末から6月はじめにかけてサービスを停止して一斉点検させ、6月20日に「コンビニでの住民票などの誤交付の原因となったシステムの点検が、対象となる123団体全てで無事終了しました。安心してお使いいただけます」という安全宣言をTwitterで出した矢先の同月28日に、福岡県宗像市で別人の証明書が発行されるトラブルが発生。
実は、44自治体で過去のシステム改修が適用されていないことがわかり、再びサービスの停止に追い込まれています。
今回のマイナンバーカード総点検について、河野大臣は「政府の総力を挙げて点検に取り組み、信頼を回復する」と語っていますが、多くの自治体では不可能と尻込みし、バイトに点検を丸投げしてお茶を濁すということになりそうです。
INFORMATION
荻原博子さんの新刊『マイナ保険証の罠』(文春新書)が8月18日に発売されます。
7000件以上の誤登録、医療現場でのシステム障害など、トラブル続きの「マイナ保険証」。さらに2024年秋には、現行の健康保険証は使えなくなる――。政府を挙げて暴走するDX政策の罠を、利用者の目線でわかりやすく解き明かす。