業界最大手の外資系の暗黙知を凝縮した『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』が話題を呼ぶメン獄さんと、現役コンサルタントでSF作家の樋口恭介さんは、仕事の修羅場をどうくぐり抜けてきたか? 元同僚の二人がハードコアな現場の裏を明かす。
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本の原型はある日送られてきた約2万字の“怪文書”
メン獄 樋口恭介さんは、僕が昔いたコンサルティング会社の後輩なんですね。一緒にハードな現場を経験してきた仲なので、今日は踏み込んだ話をしようと思います。
樋口 メンさんにはすごくお世話になってきたんですが、僕らは社内で「あいつら体丈夫だから、ヤバいところに突っ込んでおけ」みたいな存在で、メン獄さんといえば“帰ってくる鉄砲玉”とかいう異名の存在だった(笑)。メンさんはあらゆる地雷を踏み抜いていくので、僕はずっと後ろを付いていって、「これやると地雷なんだ」というのをずいぶん学ばせてもらいましたね。
そんなメンさんが2年前コロナ禍のさなか「こんなに社会がヤバくなっている中で、俺が医療現場にコミットしてないのとかありえねえだろ!?」と半ば発狂気味に医療業界に転職された後、ある日突然2万字くらいの“怪文書”が僕のところに送られてきたんですね。それがこの本の原型となる原稿だった。
ドラフト段階では議事録の書き方や論理的な思考法など、コンサルのハウトゥ的なことが多く書いてあったのですが、まあ、ビジネス読み物的にはあまりにも普通な内容だったので、その時点ではぶっちゃけ全然おもしろくなくて、「メンさんもっと面白いキャラなんだから、自分が体験したオモロ要素をどんどん投入していったほうがいいっすよ」と要望を出した。そうしたら、私小説的な要素の濃度がぐんっと上がって、完成した本を読んでもメッセージ性が有機的につながって物語として力強い終わり方をしていて、すごく楽しませてもらいました。
新人の頃の仕事は簡単そうに見えて本人にとってはすごく辛い
メン獄 ありがとうございます。最初2万字書いて送ったら、このまま10万字書きましょうって言われてびっくりしたのを覚えています。
樋口 10万字超えてこないとヤバい人の本当のヤバさは出てこないですからね。その結果本物の怪文書が生まれて、本当にすばらしいことだと思います。
この本の何が怪文書って、全体的に何と戦っているのかわからない人間の心理がものすごく出てるんですよね。一番端的に表れているのが議事録のエピソードで、厳しい上司に作成を依頼されてうまく書けたという話のディテールが解像度高く書き込まれている。議事録に困っている新人はいっぱいいるんですけど、外からみたら、定常的に作られるようなペーパーひとつでなぜ困っているのかわからないんですよね。でも、こうした議事録に限らず、新人の頃の仕事って、簡単そうに見えて本人にとってはすごく辛い。