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紙の上で見ている世界と実際に起きていることの乖離

メン獄 僕ら自身だって突然どうしてもこれをやりたいというのが出てくるし、最終的には魂と魂の問題になりますよね。

樋口 そうですね、率直な話、ロジカルシンキングだとか仮説思考だとかって、真理ではなくひとつの話法でしかないから、通用しない人には全く通用しない。お客さんたちのいる世界っていうのはリアルビジネスの世界で、つまりなんでもありの野生の世界なわけです。ビジネスってめちゃくちゃ野蛮でダイナミックだから、そういう生の現場では、綺麗ごとだとか、単なる小手先の技術や思考法なんか全然通用しないことも多い。本気の人間と本気の何かを動かそうとする時には、メンさんの言うように魂で勝負するしかない。

撮影 細田忠/文藝春秋

メン獄 僕は今の医療現場にきた時、これまで自分はどれだけ机上でものを考えていたか――紙の上で見ている世界と、実際に起きていることの乖離を痛感しました。患者さんが一刻を争う状況で倒れている場面で、DXでIT使ってくださいって、かなりこちら側の都合だなという反省がすごくある。エンドユーザーと同じものを見て、同じリアルを味わって初めて見えてくるものがあった。それはAIとかでは絶対にわからない領域だと思う。

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 人間にしかできない仕事を僕は今後もやっていきたいですね。今日はありがとうございました。

樋口 こちらこそありがとうございました。

(代官山蔦屋書店にて)

メン獄 (めんごく)

1986年、千葉県生まれ。コンサルタント。上智大学法学部法律学科卒業後、2009年に外資系大手コンサルティング会社に入社。システム開発の管理支援からグローバル企業の新規事業案件まで幅広く手掛ける。2021年に退職後、医療業界全体のDX推進を目指すスタートアップ企業にDXコンサルタントとして就職。主に大企業のテクノロジーを用いた業務改革の実行支援・定着化、プロジェクト管理、運用設計が専門領域。コンサルティング業界の内情やDXトレンドを紹介し、仕事をよりポップな体験として提案するTwitter、noteが人気を博す。

 

樋口 恭介 (ひぐち・きょうすけ)

SF作家、編集者、コンサルタント。『構造素子』で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞。『未来は予測するものではなく創造するものである』で第4回八重洲本大賞を受賞。編著『異常論文』が2022年国内SF第1位。他に『すべて名もなき未来』『眼を開けたまま夢を見る』『生活の印象』。webzine「anon press」編集。メン獄著『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』の舞台となったコンサルティング会社の現役シニアマネージャーでもある。