生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A17 やめたほうが無難です。

 がん経験者に話を聞くと、「これが効くらしいよ」と、親戚や友人、知人などからお見舞いに健康食品やサプリメント(サプリ)などをもらうことが多いそうです。あげる方も「よくなってほしい」という一心で、こうしたものを持参するのでしょう。

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 しかし、健康食品やサプリメントをお見舞いに持っていくのはやめたほうが無難です。なぜなら、患者本人にとってはそれが「ありがた迷惑」になるケースもあるからです。

 患者本人は、こうしたものを飲みたいと思っていないかもしれません。ですが、お見舞いとして頂いたものを、無下に捨てるわけにもいきません。なので、真面目な人ほど律儀に飲もうとするそうです。

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 それが期待通り効けばいいですが、現在のところ「がんに効く」とされる健康食品やサプリメントで、抗がん効果が証明されたものはありません。にもかかわらず、たくさんもらったからと頑張って飲むと、お腹がいっぱいになって食事を十分摂れなくなり、かえって栄養が偏ってしまいます。

 実際、筆者はがんに効くとされるキノコのエキスを飲んでいた患者さんのご遺族に取材したことがあります。その方に、冷蔵庫に残っていたエキス(液体)をもらって飲んでみたのですが、あまりに不味くてコップ一杯も飲み干せませんでした。
 
 それを亡くなった患者さんは「飲めば飲むほど効果がある」と信じて、一日に何リットルも飲んでいたそうです。「好きなものを食べずにこんなものを飲んでいたなんて」と思うと、本当にやりきれない気持ちになりました。

 健康食品やサプリメントは効果が証明されていないだけでなく、体に害を及ぼすリスクもあります。かつて、肝障害を起こした患者を調べてみたところ、キノコの健康食品が原因と疑われたケースがあります。また、健康食品やサプリメントに医薬品が混じっていて、それが有害な作用を及ぼしていたケースも報告されています。

 健康食品やサプリメントは「自然」や「天然」を売りにしているものが多いのですが、キノコやフグにも毒があるように、自然や天然のものだからと言って100%安全とは言えません。もし、そのようなものをお見舞いに持っていったとしたら、かえって患者さんに害を及ぼしてしまう恐れもあるのです。

 病院では、入院患者どうしが健康食品やサプリメントを勧め合ったり、売り買いが行われたりすることもあると聞きます。しかし、健康被害を及ぼすだけでなく、金銭トラブルにもなりかねません。ですから、第三者が押しつけがましく健康食品やサプリメントを勧めたり、渡したりするのは、やめたほうが無難なのです。

【参考】「統合医療」情報発信サイト(厚生労働省)