生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A15 まずは医療チームのスタッフと仲良くなりましょう。

 病院の医師はとにかく忙しいのです。外科医は外来だけでなく手術がありますし、内科医も外来や病棟でたくさんの患者を診察しなければいけません。
 
 また、患者の目に触れないところでカンファレンス(症例検討会)を行い、自分の研究や論文執筆もしています。さらに、外の病院でアルバイトをしたり、土日に学会や研究会に飛び回ったりしています。

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 そんな主治医とうまくコミュニケーションをとるには、まず「医師には時間がない」ということを患者側も理解しておいたほうがいいでしょう。もし質問がある場合には、外来や病棟で会える限られた時間にうまく話せるよう、質問したいことを箇条書きにするなどして、まとめておいてください。そうすれば主治医も、快く回答してくれるはずです。

 それでもうまくコミュニケーションをとれないときは、外来の看護師や病棟の若手医師(研修医)、薬剤師、ソーシャルワーカーなど病院のスタッフと仲良くなることをお勧めします。最近のがん医療では、「チーム医療」が重視されています。これは、医師一人で患者を診るのではなく、様々な職種のスタッフが連携して患者を支えるという考え方です。

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 チーム医療がうまく機能している病院であれば、看護師や若い医師に話したことが、きっと主治医にも伝わるはずです。もし心配であれば「〇〇先生に、ぜひ伝えておいてください」と念押しするといいと思います。後で主治医が質問に回答してくれるでしょう。

 こうした工夫をしても、どうしても医師とコミュニケーションがとれないという場合もあるでしょう。また、「相性が良くない」「不用意な言葉で傷ついた」といった理由で、主治医と関係が壊れてしまうケースもあると思います。

 そんなときも、思い切って病院のスタッフや患者支援センターなどに相談してみてください。場合によっては、お互いの誤解が解けて、以前よりいい関係が築けるかもしれません。あるいは、病院側が配慮して、主治医を変えてくれるかもしれません。

 いずれにせよ、がんや他の病気もそうですが、主治医や医療スタッフとの信頼関係がなければ、うまく治療を進めることはできません。患者側もしつこくクレーマーになってしまうのではなく、同じ感情を持った人間同士であることを理解しながら、いい関係が築けるように配慮ができればいいと思います。

【参考】「チーム医療がもたらす患者さんと病院の良好なコミュニケーション」(国立がん研究センターがん情報サービス)