生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。
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A13 何かにこだわり過ぎず、健康に心がけてください。
がんの治療が一通り終わったら、医師から「後は経過観察をするだけで、ふだん通り生活してください」と言われるかもしれません。しかし、がんの経験者の多くが、何かしないと「再発するのではないか」「またがんになるのでは」と心配になるそうです。もし、何かをするとしたら、どうすればいいのでしょう。
その参考になるのが、米国対がん協会が2012年に発表した「がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン」第4版です(参考文献:『「がん」になってからの食事と運動』米国対がん協会著、村木美紀子訳、坪野吉孝監訳・解説、法研)。
米国対がん協会が専門委員会を組織して、がん体験者の食事と運動について最新の研究をまとめたもので、がん治療後に心がけるべき生活のアドバイスとして、次のようにポイントがまとめられています(詳しくは記事の最後の【参考】をご覧ください)。
・健康的な体重を達成し、維持しましょう。
・定期的に運動しましょう。
・野菜、果物、全粒穀物が多い食事パターンにしましょう。
あまりに普通のことばかりで、拍子抜けしたのではないでしょうか。しかし、がんと食事や運動についての研究はまだ少なく、これが最新の成果に基づくアドバイスなのです。
目につくところがあるとしたら、「全粒穀物」という言葉かもしれません。これは精白していない穀物のことで、茶色い生地のパンや玄米、五穀米などがこれにあたります。
なぜ、これが推奨されているかというと、乳がん患者を追跡した研究で、野菜、果物、全粒穀物、鶏肉、魚類を多く食べている人は、精白穀物(白パンや白米など)、加工肉、赤肉(牛肉や豚肉など)、デザート、高脂肪乳製品、フライドポテトを多く食べている人より、死亡率が低かったという米国の研究があるからです。
こうしたことから、玄米雑穀を主食に、季節の野菜や果物、豆類、キノコ類、海藻類、魚を摂り、鶏や卵は少量にして、白米、白パン、赤肉、砂糖、お菓子、牛乳などを避ける玄米菜食は、理想的な食事と言えるかもしれません。
ですが、玄米菜食に慣れていない人は、これがストレスになってしまう場合もあります。あるがん経験者の方から、「自分は玄米菜食にしているのに、他の家族が餃子を食べているのを見て、とてもつらかった」という話を聞いたことがあります。
また、玄米菜食にこだわり過ぎるとたんぱく質や脂質が不足して、かえって病気と闘う体力を落としてしまうと指摘する専門家もいます。ですから「何かをする」ことにこだわり過ぎない程度に、健康に気を遣うといいのではないでしょうか。がん予防は、すべての病気の予防にもつながります。
【参考】「がん体験者の栄養と運動のガイドライン」(国立がん研究センターがん情報サービス)