生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。
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A20 一概には言えないと思います。
がんは命に関わる恐ろしい病気です。家族や芸能人などの壮絶な闘病を目にして、「がんにだけはなりたくない」と思う人も多いのではないでしょうか。
確かに、若くしてがんになった芸能人などの訃報を耳にすると、やりきれない気持ちになります。未練を残してこの世を去るのは、ご本人もさぞ悔しい気持ちだったでしょう。
ただ、がんにかかるのは、大半が高齢者です。国立がん研究センターが公表している「がん登録・統計」によると、がんの死亡率は40代から上昇し始め、年齢が高くなるほど右肩上がりに増えていきます。20歳の人が20年後までにがんで死亡する確率は、男性が0.1
現時点で0歳の人が生涯でがんによって死亡する確率は、男性が2
だとすれば、いたずらにがんを恐れるより、「いずれはがんになる」と肝を据えて、「そのとき自分はどう生きるか」を常に考えておくことが大切なのではないでしょうか。
たとえば私の場合、子どもが成人して独り立ちするまでは、現役で頑張って働き続けたいと考えています。ですから、もし現時点(50代)でがんになったら、苦しくても積極的に治療に挑むのではないかと思います。
しかし、70代を越えたら体力を落とすような、無理な治療はしないかもしれません。さらに平均寿命(2016年の女性は87.14歳、男性は80.98歳)を越えたら、苦痛を取る治療だけにして、運命を受け入れたいと考えています。
もちろん、高齢でも「積極的な治療を受けたい」という人がいるはずです。ですから、私の考えを押し付けるつもりは毛頭ありません。それに、私だっていざがんと診断されたら、本当のところどうするかわかりません。
ですが、いざというときに備えるために、シミュレートしておくことは大切だと思うのです。そのためには、ある程度がんに対する知識がなければいけません。ですから、がんになる前にがんのことを学んだり、家族と話し合ったりする時間を持ったほうがいいと思うのです。
それに、人間最期は様々な要因で亡くなります。脳卒中でずっと介護を受けた末に亡くなる人や、寝たきりで誤嚥性肺炎になって亡くなる人、心臓病である日突然命を失う人もいます。交通事故で命を奪われる人もいれば、つらいことですが自ら命を絶つ人もいる。
それを考えれば、がんだけがとりわけ不幸ということはないはずです。「がん」や「死」をいたずらに恐れるより、せっかく授かった限られた命を一日一日大切に生きるべきではないか──長年医療現場を取材して、より強くそう考えるようになりました。
【参考】国立がん研究センター「がん登録・統計」