生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A16 持病の有無が判断材料の一つになります。

 がんは専門的で高度な治療が必要な病気です。がんと診断されたら大学病院など大きな総合病院か、地域のがんセンターなど専門病院を勧められることが多いでしょう。

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 では、どちらを選べばいいでしょうか。判断材料の一つになるのが「持病の有無」だと思います。

 たとえば、重い糖尿病や心臓病、肺の病気などの持病のある人が、がんの手術や抗がん剤治療を受けると、それらの治療にともなって起きる感染症や脳血管障害、肺障害といった合併症のリスクが増えます。 

 こうした合併症のリスクをできるだけ少なくするには、がんの治療を始める前に持病の状態を少しでもよくしておく必要があります。また、もし合併症が起こった場合も、その患者の持病に詳しい専門医の協力を求めなければなりません。

 がん専門病院でも、こうした持病を診る専門医(代謝・内分泌科、循環器内科、呼吸器内科医など)が在籍していることはありますが、重症になると診ることができない場合があります。一方、大学病院など総合病院であれば、あらゆる診療科の専門医がそろっています。ですから、重い持病を持っている場合は、総合病院で診てもらったほうがいいケースが多いのです。

 実際、某がんセンターから大学病院の教授になったある名医が、筆者に次のように話してくれたことがあります。

「がんセンターの時代には、重い持病のある患者さんはなかなかお受けすることができませんでした。今は、様々な診療科がそろっていますので、専門病院で受けられない重い持病のあるがん患者さんを治療するのが、我々の使命だと思って取り組んでいます」

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 一方、がん専門病院にも、総合病院にはないよさがあります。それは、病院一丸となってがん治療に取り組んでいることです。

 大学病院など総合病院では、がんだけを診ているわけではありません。心臓病や脳卒中、肺炎など様々な患者さんが入院しています。大学病院だと規模が大きいので、他の診療科や医療専門職との連携が、必ずしもスムーズにいかないことも多いでしょう。

 その点、がん専門病院のスタッフは、ほとんどががんの専門家です。他の診療科や医療専門職の人たちともカンファレンス(症例検討会)などで顔を合わせることが多いので距離が近く、総合病院に比べると連携もスムーズに進むことが多いと思われます。

 このように、どちらにも長所・短所があります。本人の状況や希望なども踏まえたうえで、信頼できるかかりつけ医などにも相談して、適切な病院を選ぶようにしてください。