生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A14 耳ざわりのいいことばかり言う外科医は要注意

 がんの手術を受ける場合、最大の目標は「質が高く、安全な手術ができる外科医を選ぶ」ことになるはずです。質の高い手術を受けなければ再発したり、後遺症で術後の生活の質が落ちたりするかもしれないからです。安全にも十分に配慮して手術をしてもらわないと、術後の合併症で苦しみ、命すら落としかねません。

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 では、どうすればいい外科医を探すことができるでしょうか。数多くの「名医」と呼ばれる外科医を取材した経験から、いくつかポイントをまとめてみました。

 まず目安となるのが「手術数」です。外科医はたくさん手術を経験しなければ腕が上がりません。また、地域で信頼されている外科医のもとには紹介患者が集まるので、手術数も必然的に多くなります。ですから、まずは病院のホームページや医療情報のサイトなどで、手術数が多いかどうか確認してみてください。

 次に重要なのが、「合併症率」「手術死亡率」です。これらが低いに越したことはありませんが、大切なのは、その外科医本人が執刀した手術での数字かどうかです。論文などに載っている他施設のデータで説明されても、その数字がそのまま自分が受ける手術に当てはまるとは言えません。ですから、外科医の診察を受けるときに、きちんと自分の手術経験数や自分の成績を話してくれるかどうか確かめるといいでしょう。

 3つ目に、その外科医と「相性」がよさそうかどうかです。まれとはいえ、手術は一歩間違えれば死に直結します。それだけに、「この人なら、自分や家族の命を預けられる」と思える外科医に手術を受けることが大切だと思うのです。 

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 どんな外科医と相性がいいかは、人によって違うでしょう。「優しくてハートフルな医者がいい」という人もいれば、「ブラック・ジャックのように冷徹でも腕が確かならいい」という人もいるはずです。いずれにせよ、術後に困ったことが起きた場合も、遠慮なく話せるような信頼関係を築ける外科医を選ぶことをおすすめします。

 がんの種類などによって手術の難易度に差はありますが、絶対安全な手術などありません。また、体につく傷が小さいに越したことはありませんが、がんの手術で一番大切なのはあくまで「根治」させることです。「簡単な手術です」「痛くありません」など、耳ざわりのいいことばかり言う外科医には気をつけてください。自分がやりたい手術を受けさせたいだけかもしれません。

 多くの人にとって手術を受けるのは、一生に1回か2回あるかないかです。手術に失敗すると、後悔してもしきれないことになってしまいます。それだけに、「外科医選びに妥協は禁物」と言えるでしょう。