1回の報酬は3000~5000円程度……新宿歌舞伎町で長年、「立ちんぼ」として生計を立てる久美(仮名、年齢不詳)さん。夫との離婚後、一人娘もひとり立ちし、昼職を見つける選択もあったはずの彼女はなぜ路上売春をやめなかったのか?
近年、増えつつある「街娼たちの実情」に迫った、ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の新刊『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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数千円で春を売る理由
東京で仕事にあぶれたらまた泉の広場に引き返すという繰り返しだったというが、また時期は曖昧なまでも、最後に行き着いたのは新大久保でのチャットレディ経験のときに界隈を彷徨うなかで知った、ハイジアと大久保公園一帯での売春に他ならない。久美さんが40歳を過ぎたころに娘は成人してひとり立ちした。つまりもう、自分の生活費以上に稼ぐ理由はない。
むろん、もうそのころにはデリヘル開業が解禁されていたなど、少ないながらも探せば熟女であっても雇ってくれる舞台は整っていたことになる。いやデリヘルでなくとも、昼の一般職を模索することはしなかったのか。
「えっ、まあ、長くこの仕事を続けてきましたから……」
そんな大雑把さが、悲惨な結果を招いてしまった。
前述のとおり、久美さんの売春単価はひとり頭3千円から5千円で、およそ売春の対価として得る金額ではない。いや、その金額で買ってくれるのはまだマシなほうで、多くはたった千円で性行為に及んでいるのだった。
冒頭で記したようにしゃがんでいると──まるで罰ゲームに興じるように──買う気はないが売値くらいは聞いてみようかといった具合で冷やかし客が興味本位で声をかけてくる。そこで大塚あたりの激安ピンサロの半値を提示されれば、どうなるか。
その安さから交渉が成立し、公衆トイレや雑居ビルの踊り場でフェラや手コキをするのである。むろん、5千円で買ってくれる常連客もいるにはいると言うが……。