果たして食べていけているのか。暮らしぶりはどうか。やはり女性専用サウナかネットカフェ暮らしを続けているのだろうか。実はパトロンめいた男性がいて、住居だけは確保されているのかもしれない。このまま取材を終わらせても問題ないと思っていたが、まだまだ疑問が湧いてくる。ねえ、久美さん、今日は何を食べたの。どこに帰るの。
「ネットカフェですよ。朝食もそこで提供してくれる無料のもので済ませました」
某ネットカフェの名前を挙げ、毎日そこに泊まっているという久美さんから受けた僕の印象は、意外にやっていけているんだ、というものだった。ネットもテレビも見放題で、タダで飲み物や軽食にもありつける。感想は「ありがち」で、貧困層には違いはないがネット難民と称される若者たちと同様の暮らしぶりが想像され、それほど浮世離れはしていない。が、ネット民よりさらに苦境に立たされていたことを、僕はあとから知ることになる。
久美さんが気がかりな「娘の存在」
ラブホテルを退出して解散した翌日のことだ。再び公園で久美さんを見つけ、食事に誘った僕は、久美さんの希望で歩いて数分の距離にある中華料理チェーン店『日高屋』にいた。久美さんが麺類のなかでいちばん安い中華そばを頼んだので、僕も同じものを注文し、ふたりして麺をすする。目的は久美さんの暮らしぶりを知ることだ。
こうして関係を深め、久美さんが拠点にしているというネットカフェの居室のなかを見せてもらおう。
「麺類が好きなんです。去年の大晦日は、ちょっと奮発して天ぷら蕎麦を食べました」
自分へのご褒美じゃないけど、と前置きして語る久美さんだった。
僕は本題を切り出した。だが、思惑はすぐに弾かれてしまう。久美さんは「いつも時間料金より安い夜から朝までのナイトパックを利用してるんですよ」と言い、すでに今日も退出していたからだ。
実際はネカフェ暮らしをすることすらままならなかったのである。実入りはよくて1日数千円、ときにはゼロの日もあることからして、荷物を置いたり雨露をしのぐ拠点を持つことは思いのほか無理があり、朝9時ごろにネットカフェから出るとそのまま夜10時までずっと路上に。