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『人間失格』プレイリストの再生回数は428万回(8月3日現在)で、コメントはなんと4000以上にも達している。韓国ではYouTubeのプレイリストで注目を集めて書籍が売れる現象があるという。

「TAKE A LOOK」による「人間失格」のYouTubeプレイリストは400万再生を超えている

 民音社によると、『人間失格』の読者の40%は10~20代で、特に20代の女性に人気があるという。プレイリストの書き込みを見ると「この動画を聞いて、『人間失格』を読みました」というコメントの他にも、作品についての思いを熱く綴るものが多い。

「中学生の時から日本文学が好きだった18歳ですが、日本の小説を読むと特有の静けさと残忍な内容を黙々と語る文体に圧倒されます。主人公の思いも分からなくなります。私は退廃的な文学が好きですが、『人間失格』は特にそんな感じが濃く、10回以上読むたびに主人公の感情に少しずつ共感を覚え、理解できるようになってきました」

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「中学生ですが、このプレイリストを通して初めて『人間失格』を知りました。(中略)『神に問う。信頼は罪なりや』には頭を殴られた感じがしました」

「韓国のZ世代には“スマイル仮面症候群”が多いといわれ…」

『人間失格』がこれほど10~20代から支持される背景について、民音社のチョさんは「うまく人間関係が作れない主人公に自身を投影し、共感しているのではないかと言われています」と説明する。

韓国語版の「人間失格」

「『人間失格』には、いい人であることを強いられるプレッシャーや、対人関係での居心地の悪さなどが書かれています。韓国のZ世代には“スマイル仮面症候群”が多いといわれ、そんな自分自身の姿を小説の主人公に投影しているのでは、と推測されています。また、2016年頃から韓国で社会的なキーワードになっている『嫌悪』と、『人間失格』という直感的なタイトルの親和性もあるのではないでしょうか」

『人間失格』に限らず日本の小説は韓国で人気が広がっており、2014年頃から年間のランキングに何冊も入る状況になっている。作家は村上春樹と東野圭吾がツートップの人気で、東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は2013年に韓国語版が出版されてから10年間売れ続けている。